よく父に言いつけられて、その煙草屋にタバコを買いに行った。今はもう売っていない「桔梗」とかいうきざみタバコだった。時々、店に同い年の女の子が出て来てその子からタバコを受け取った。 小さな温泉町で、鉄道の線路と街並みが平行して走っていた。川が一本平行して流れていた。私達の小学校はその川向こうにあった。その川に橋が二か所にあって、それぞれ通学路になっていた。煙草屋は川上の方にあった。私の家は川下にあった。煙草屋の娘は、当然川上の橋を渡って、通学していた。私は川下の橋を渡って通学すれば、近いのだが、いつも遠回りになる川上の橋を渡って通学した。いつも煙草を買いに行ってるのだから顔見知りなのだが、その子と並んで歩くことはなかった。 学校には私はその小学校には、一年しかいなかった。父の転勤で隣の県に移った。 そして、私の記憶は、70年経って、あの子について知っていることはこれだけに過ぎない。どんな顔立
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