今はスキューバダイビングの名所として知られる南の島はかつて、日本の占領下にあった。そこに暮らす人たちに日本軍を歓迎させ、日本語を浸透させるため、現地では子ども向けに邦字新聞が発行された。その新聞では、日本の劣勢が明らかになる頃まで4コマ漫画の連載が続いた。 漫画の中で、島から来日した主人公の少年は、友達の案内で日本のさまざまな場所に足を運ぶ。そして、初めて経験する日本の寒さに震え、東京の人混みに驚く。時代背景と、作品に流れるほのぼのとした空気にギャップを感じた。描いた人は何を思い、戦争をどう感じていたのか。どうしても知りたくなった。【椋田佳代/東京社会部】 連載「残像・戦争の記憶と記録」は、全5回です。 このほかのラインアップは次の通りです。 第1回 「特攻と桜」は悲劇を映す 第2回 「8・15」のメモをたどれば 第4回 南京、レンズ越しの「真実」は語る 第5回 そして従軍日誌だけが残った