Ⅰ 判例のポイント 近時の性犯罪に関する実務の流れは、「被害女性の視線」を重視する方向にあったように思われる。最高裁大法廷は、強制わいせつ罪に関し、50年ぶりに判例変更を行い、行為のわいせつ性を認識していれば、必ずしも「性欲を刺激興奮させるとか満足させるという性的意図」がなくても犯罪は成立するとした(最大判平成29年11月29日刑集71-9-467・WestlawJapan文献番号2017WLJPCA11299001)。これは、現に性的羞恥心が害され、法益侵害性が明らかな事案においては、「性的意図の存否」は重要ではないという解釈論が強まってきていたことに沿うものといってよい。 そして、性犯罪に関する裁判例には、複数の強姦や強姦未遂行為が認定された事案に関し、大阪地判平成16年10月1日(判時1882-159・WestlawJapan文献番号2004WLJPCA10010004)が、懲役12