ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング(NUMMI)は、「トヨタ方式による高度な生産性を実現し、高品質・低コストの乗用車を提供」することを基本方針に掲げた。それを実現するには安定した労使関係やトヨタ方式による生産システムのスムーズな移植、現地部品メーカーとの緊密な協力関係の構築など解決すべき課題は山積していた。 とりわけ、労務問題はトヨタ方式を確立するうえで難関であった。全米自動車労働組合(UAW)傘下の従業員は、組合のルールで個人の職務範囲が厳密に決まっており、一人ずつが複数の工程を柔軟にカバーしていく多能工を基本としたトヨタ方式とは相容れず、生産工程でのチームとしての連携に不安があった。UAWとの交渉では、絶えずお客様の立場で考えるトヨタの「モノづくりの基本」と、安定した労使関係の基となる「労働条件の長期安定的向上」を粘り強く訴えた結果、徐々に理解が得られた。 1983