特別に詩について語るべきことはない。愛を語ろうとして愛がないことに気づくように、本当のことを告げようとして本当のことがほとんどないことに驚かされる。亡霊の愛があり模倣の愛があるだけでいいような気もする。真実の模倣が、それでも真実である確率を生きながらえている。 そこから先は字がかすれていて読むことができない、そういう手紙だけを交換し合った女と安いファミレスに行った。安いファミレスに行くことをためらわなかった。つねにためらわせないものに押されていて、迷うことができなかった時間が私たちの何かを育てようとしている。 少しだけ降る雨を求めてすごした窓辺。暗闇を信じようとしない夜。彼女に触れながら絶えず失っている彼女をだきしめる。脇道しかない街をだれも高速で抜けることができない。そこを走る遅いバスには、夏休みになると知らない少年が虫かごを持って乗ってくる。 夜の中にうす暗い夜が息をひそめていた。模倣