とある自動車整備会社の二階で「スターフォックス64」をプレイするとき、小学生の私が握っていたのはニンテンドー64ではなく、プレイステーションのコントローラーだった。そのあと隣の部屋で、エンカン服を着た大人たちに混ざって麻雀をしているとき、私は勝負事のおもしろさを学んだ。この文章はその経緯の素描である。 スターフォックスと麻雀卓 私の記憶にあるこの場所はいつもたくさんの人がいて、ブルーカラーもホワイトカラーも一緒くたになって酒を飲んでいた。どういう経緯があったのかはわからないが、自営業を営む私の両親は、もっとも懇意にしている得意先であったこの自動車会社の二階にある、オフィス兼食堂のようなところに、幼い私を預けることがあった。その場所にはしっかりとした革張りの応接椅子や伝票の束、台所とホシザキの冷蔵庫、永遠に若いままの水着姿で私たちに微笑みかけてくれるビール広告の美女のポスターなどがあったが、