ときには男子の美徳として、ときには忌避される対象として。時代の移り変わりとともに、イメージが変容してきた「童貞」という言葉。しかし、いつの時代も“めんどうな基準を設定し、セックスにかんして劣位の者を作り出してコキ下ろす”という構造が見られる。 ここでは、2015年に文庫版が刊行された『日本の童貞』(河出書房新社)より、著者の澁谷知美氏のあとがきを引用。童貞にまつわる言説、男性のセクシュアリティの変化についての筆者の考えを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む) 童貞を否定しているのは「当事者」である男性である 『日本の童貞』は筆者にとって一冊目の本で、思い入れが深い。「私の処女作は童貞です」というセリフを言いたいがために、博士論文よりもこの本の執筆を優先し、当時、所属していた大学のパソコン部屋で作業にいそしんでいた。さいわい、読者からは好意的な反応をいただき、いろいろな媒体で取り上げてもら