二〇〇四年、イラクで武装勢力の人質となり「自己責任」とバッシングされた今井紀明さん(32)の体験がモチーフの美術展が、東京・南麻布で開かれている。会員制交流サイト(SNS)にあふれる匿名の批判による「炎上」に、誰もがいつ陥るか分からない現代の恐怖を表現しながら「建設的なコミュニケーションがあれば、社会は変えられる」という希望のメッセージも込められている。 (神谷円香) 「非国民め!死んでしまえ」。激しい中傷の文字が大きく書かれた紙で顔を隠した人物が、不気味に指をさす。そんな六枚の写真の周りを、今井さんが実際に受け取った五十通の手紙のレプリカが囲む。ほとんどが批判だ。展示は写真家岡本裕志さん(26)=東京都小金井市=が「他者への不寛容」をテーマに企画した。 今井さんの札幌市の実家には人質事件の直後、百通を超える批判の手紙が届いた。対人恐怖などで家にこもりがちになった今井さんは二年後、「向き合