原発事故を想定して政府が過去に実施した総合防災訓練で、「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)を使った放射性物質拡散の予測が、いずれも訓練当日の風速を用いず、年間平均風速に近い弱い風で計算していたことが分かった。放射性物質の放出量や気象条件が甘い設定の結果、住民避難が必要な範囲は政府が定める「防災対策重点地域」(EPZ)の10キロ圏内にとどまり、広域防災に生かされなかった。 福島第1原発事故では避難対象範囲が原発から30キロ圏外に及んだ。政府は10キロ圏外の被害を「想定外」としてきたが、避難範囲が10キロ圏内にとどまることを前提に訓練の条件を設定した疑いを指摘する声も出ている。 政府主催の原子力総合防災訓練は00年以降、原子力災害対策特別措置法に基づき、新潟県中越地震が起きた04年を除いて毎年1回、各原子力施設の持ち回りで実施。SPEEDIは全訓練で事故影響の予測に利用された。