背が高く、笑顔が素敵なヴォルクはモスクワの地下鉄のレジェンドである。なぜ「地下の住人」になったのかと問うと、恥ずかしそうに「偶然なんです」と答える。 エチオピア空軍の若き中尉はソ連時代に交換留学でこの国にやってきた。まず1985年にジョージアで、その数年後にアゼルバイジャンで学んだ。しかしここでヴォルクが社会主義の建設について学んでいる間に、母国エチオピアでは内戦が勃発し、「旧型」の軍人は新しい国家には必要なくなってしまう。妻と子どもたちはロシアには来たがらず、そのままエチオピアに残った。そしてその数週間後、ソ連邦が崩壊。バクーの外国人学生たちはモスクワに送られることになった。 彼はモスクワで「難民」としての地位と労働許可証を得た。しかし経済危機の時代、仕事を見つけることは容易ではなかった。そのとき、ロシア人のガールフレンド、オリガが地下鉄のデポに行ってみてはと助言したそうだ。彼は機械に詳