先日の神戸労働法研究会の席で,神戸学院の梶川敦子さんから,「割増賃金請求訴訟における時間外労働時間数の立証と使用者の記録保存義務ーアメリカ法の検討を中心にー」神戸学院法学38巻3・4号(2009年)355頁以下をいただきました。大晦日ですが,掃除もせずに,勉強をしてみることにしました。 最近,過払い金返還請求訴訟が次々と行われたようですが,これが一段落して,次のターゲットは,サービス残業の未払い賃金返還請求だと言われています。私は,サービス残業問題を,すべて,使用者の規範意識の欠如としてやり玉にあげるのは必ずしも適切でないと思っています。梶川論文も最後のところで,このことを適切に指摘しています。労働時間概念は非常に不明確で,それゆえに使用者が労働時間規制を遵守しにくくなっているという面もあるのです(拙著『キーワードからみた労働法』(2009年,日本法令)237頁以下も参照)。 ところで,梶
パナソニックプラズマディスプレイ事件の最高裁判決が出ました。会社側の逆転勝訴です(厳密には,リペア作業に従事させたことに対する損害賠償請求は,原審の高裁判決を維持)。専門家や実務家がたいへん注目していたこの事件は,口頭弁論が開かれたことから予想されていたように,高裁における,原告労働者と会社との間での黙示の労働契約の成立を認めた判断が,覆えされたわけです。 私は,高裁判決は,理論的にはたいへん問題がある判決だと考えていたので,この結論は妥当と考えています。法律時報の12月号の学界回顧でも紹介したように,この問題は,学界でも争点となっていますが,実質的には,いわゆる偽装請負をした会社に対するペナルティとして,当該労働者の雇用責任を引き受けるべきとするのかどうかが問われています。その結論を是とすれば,多少,理論的には無理があっても,黙示の労働契約の成立を認めるロジックはありえないわけではありま
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