『色仏』(花房観音/文藝春秋) 事滋賀県の琵琶湖近辺には美しい仏像が存在する。正確な製作年や作者は不明だが、地元の人々は大切にしてきた。戦国時代に織田信長が浅井長政や朝倉義景と戦ったとき、戦火から逃れるために村人たちは像を土に埋めていたと伝わっている。像は布でぐるぐる巻きにされて土中に埋められ、「埋伏之地」(像を埋めていた場所)まで残っているものもある。琵琶湖の北端で若狭(現・福井県)に近い、いわゆる北近江地域には現在でも春と秋の「観音の里めぐり」ツアーや「観音検定」まで存在するほどだ。 『色仏』(文藝春秋)の著者・花房観音さんは、1971年、兵庫県生まれ。京都女子大学中退後、映画会社、旅行会社など様々な職を経て、2010年、団鬼六大賞を受賞し小説家デビュー。京都を舞台とした官能小説やホラー小説を主に執筆している。ちなみに、団鬼六さん(1931-2011)は官能小説の第一人者として著名。ピ