歌詞に見る食卓の情景「お魚くわえたドラ猫追っかけて はだしで駆けてく 陽気なサザエさん」 表記の一節は、日本の国民的アニメ『サザエさん』のオープニングである。誰もが口ずさむことのできるこの曲は、1969年の放映開始当時から使用されていた。東名高速が完成しアポロが月へ行った、高度成長期も終焉を迎えつつある年のことである。 サザエさんが通う魚屋「魚徳」(長谷川町子美術館公式より)。この店は飲食店として世田谷区に現存しているこの歌詞からは、当時の食卓における魚の消費のされ方が浮かび上がってくる。主婦が家計をやりくりしながら、日々家族の好みにあわせた旬の食材を鮮魚店で購入する。持ち帰ってそれを煮たり焼いたりしつつ、食卓の準備をする。完成すると、親子三世代がちゃぶ台を囲んで食事につく。 このように、明確な性別役割分業のもとで家事を中心となって担っていた女性たちが、不定形で多種多様、かつ調理に手間のか