「スピリチュアルと科学が逆転した、心の絆が生み出すユートピア・ニッポン!」ーー帯にはこう書かれている。ところが読後の感想は、200%ディストピア。 当連載のテーマともいえる「科学的根拠のない健康法」「スピリチュアルな言動」。それらがマジョリティとなった世界を描くSF小説が現れました。タイトルは、何とも不思議な語感漂う『るん(笑)』(酉島伝法・小学館)。 私はスピリチュアル物件周辺に共通する謎のお作法や独特な言葉遣いを「スピしぐさ」と名づけ、常日頃からツイッタランドのみなさまに「あるある」をご教示いただいていますが、この作品の世界ってば、何もかもがスピしぐさそのもの。「アレもデタ! これもデタ!」という喜びと、トンデモがスタンダードになった世界に感じる気味悪さ。いろいろな感情の蓋を開け閉めされてしまい、乗り物酔い的なふわふわをくらいました。 『るん(笑)』に掲載されているのは、連作となる3つ