訓読 >>> 橘(たちばな)は実さへ花さへその葉さへ枝(え)に霜(しも)降れどいや常葉(とこは)の木 要旨 >>> 橘という木は、実も花もその葉さえも、冬、枝に霜が降っても枯れることのない常緑の樹である。 鑑賞 >>> 天平8年(736年)11月、葛城王(かずらきのおおきみ=橘諸兄)らが、姓(かばね)と母方の橘の氏(うじ)を賜わったときの聖武天皇の御製歌。左注には「このとき、太上天皇( 元正天皇)、聖武天皇、皇后(光明皇后)が共に皇后宮においでになり、宴を催されて橘を祝う歌をお作りになり、併せて橘宿祢らに御酒を賜った」旨の記載があります。 橘の木そのものを讃えることによって一族を祝おうとする意をあらわされた御製です。この時の諸兄は53歳。これ以後、最高権力者へとかけのぼる出発を記念する歌として載せられています。「橘」は、当時きわめて賞美された木で、『日本書紀』には、垂仁天皇の御代に、田道間
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