それは8月の終わりだった。 息子に宛てた10歳の誕生日の手紙を書き終え、図書カードと一緒に封をして投函したあと、私はほぼ20年ぶりで卒業した大学へと向かった。 息子の誕生日の翌日は養育費をめぐる調停の3回目で、その次の日は自分の誕生日だった。調停は今回で決着をつける心積もりでいたので、少し前からぼんやりと、自分への誕生日プレゼントに何をしようかと考えていた。 ひとりの生活もだいぶ落ち着き、収入の範囲内で欲しいものはいつもそれなりに買っているし、いつも食べたいと思ったものを食べている。先月、小旅行もしたばかりだ。調停の申立てを受けてから合意までの8ヶ月分の養育費や弁護士報酬の支払いも控えていたので、お金をかける余裕もなかった。 そこでふと思いついたのが、母塾に行くこと、そして、キャンパスの一角にある創設者の墓を訪ねることだった。 卒業から2、3年後にキャンパスを尋ねたことはあったが、それ以来