第18回開高健ノンフィクション賞の受賞作『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』(集英社)の文庫版が1月20日に発売された。2018年に亡くなった「異色の登山家」とも称される栗城史多氏を描き、注目を集めた一冊だ。 栗城氏は「夢の共有」というキャッチコピーを掲げて登山の様子を動画配信するなど、従来の登山家のイメージには収まらない型破りな活動を続け、話題を呼んだ人物だった。その活動には激しい毀誉きよ褒貶ほうへんがついて回った。 そんな栗城氏を主人公に据えた本書を、著者の河野氏が執筆するに至ったきっかけとは何か。また、本書を通じてどのようなメッセージを世に訴えたかったのか。文庫版の刊行を記念して、2021年に実施された著者インタビューの後編をここに再掲したい。 ――本書の重要なテーマとして、「インターネット」や「SNS」が挙げられると思います。栗城さんはネットでの活発な発信や、動画での登山中継