安定した企業に就職して、昇進して、結婚して、子供を作って、穏やかな家庭を築く。毎月の仕送りと、たまに旅行へ連れて行って、母の日、父の日には少し高価なプレゼントを贈る。ありふれた、完璧な親孝行だ。 中でも孫を抱くことは、親にとってこの上ない幸福なのだろう。祖父母が私を追いかける目を見て思う。頭をなでる手も、うなずき、承認する声も、親や恋人のそれとは違う、キャンドルにあかりを灯したような慈愛に満ちていた。 私は同性愛者で、愛する人と結婚し、子供を作ることができない。 親を失望させたくない、悲しませたくない。なにが裏切りなのかわからない葛藤の中で、本当の自分を隠し続ける。親にカミングアウトするゲイは、生命の繋がりを断つ覚悟を、愛すべき人たちに背負わせるのだ。 私がカミングアウトしてから、もう何年もの時が経つ。 これは、一介のゲイの、まぎれもない人生の分岐点だった、母への告白の話だ。 母は、いつだ
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