中国・上海市で開催された世界最大級の家電見本市「AWE(Appliance & Electronics World Expo)2024」(2024年3月14~17日)を取材していると、中国Haier Group(ハイアールグループ)のブースで不思議な展示を見つけた。同社の冷蔵庫「DELICACY」シリーズの新型モデル「Boguan 660」のチルド室に、2個の方位磁石が設置されていたのだ(図1)。
『日経ものづくり』2024年2月号の特集テーマは「シニア再始動」。社会的な労働力不足により、雇用延長などによってシニアを退職させず活用する動きを紹介した。業種にもよるが、早期退職させるよりも労働力として維持する選択肢のほうが主流になりつつある。 同特集で、シニアが活躍する企業として登場するHIOKI(日置電機)と住友電設に共通していたのが「40歳代の従業者が特に少ない」ことだった。企業や産業の高齢化を表現するときは、普通は「高齢就業者数(65歳以上)は20年間で32万人増加」(2023年版ものづくり白書)のように、一定年齢以上の人数なり割合なりが増えた、などと形容される場合が多い。しかし実態はもう一歩複雑で、単に若手が少ないのではなく、次世代のリーダーを担う中間の年齢層が特に少ないのだという。 これまでも、同じような話を取材で耳にしたことはあった。40歳代といえば、就職氷河期といわれる20
米Microchip Technology(マイクロチップ・テクノロジー)は、8ビットマイコンの新製品「PIC16F13145ファミリ」を発売した(図1)。新規開発の周辺ロジック回路「Configurable Logic Block:CLB」を内蔵していることが最大の特徴である。CLBは、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)のように、フィールド(ユーザーの手元)でカスタマイズ(プログラム)できる。CLBの内蔵によってPLDやFPGAの外付けが不要になり、部品代削減やプリント回路基板(ボード)の小型化、消費電力の削減が期待できるという。
国内大手ITベンダーが2024年、ついに大規模言語モデル(Large Language Models:LLM)サービスの提供を始める。NTTは2024年3月に「tsuzumi(つづみ)」を、NECは2024年春ごろに「cotomi(コトミ)」をそれぞれ提供する予定だ。さらにソフトバンクも2024年内にLLMを開発するとしている。 NTTやNECが提供する国産LLMはいずれも、「大規模」言語モデルとはいえ米OpenAI(オープンAI)の「GPT」などに比べるとコンパクトにつくられている。実はこの規模を選んだことこそが、2社それぞれの見いだした勝ち筋でもある。果たして2社は「GPT1強」とも言える市場に変化を起こせるか。国内勢と海外勢の違いをひもときながら、2社の狙いを見ていこう。 「大規模」だけど「小さい」国産LLM これまでGPTをはじめとするTransformerベースのLLMは、パラメ
1989年から不正行為が見られ、特に2014年以降に不正が増加していることが判明した。不正の原因については「短期開発の強烈なプレッシャーの中で追い込まれた従業員」にあると分析した。(写真:日経クロステック) だが、この報告書の内容を「自動車メーカーで仕事をしたことがある人間なら誰も信じない」と自動車メーカーで開発設計者(以下、設計者)を経験したコンサルタント(以下、自動車系コンサルタント)は語る。「技術検証力が不足した報告書」と断じるのは、同じく自動車メーカーの開発設計出身のアナリスト(以下、自動車系アナリスト)だ。 第三者委員会は調査に約7カ月もかけていながら、生々しいクルマづくりの現場の実態を知らないため、不正の本丸に切り込めなかった。同委員会の貝阿弥誠委員長が自ら、調査には「限界がある」と認めている。そして、ダイハツ工業はそれをよいことに、「本当の事」を言わずに隠蔽を決め込んだ。こう
経済停滞による失われた30年と足元の円安で、日本の給与水準は海外と比べて大きく落ち込んでしまった。たとえ高いスキルを持つエンジニアでも条件の良い職を見つけなければ、日本では安い労働力として買いたたかれるのが現実だ。決して高くない賃金で働くエンジニアを見るたびに、「外貨支払いの仕事で働いた方が良いのでは」と思えてくる。 記者は現在、取材のため米国カリフォルニア州に滞在しているが、物価の高さに驚いている。ホテルの売店ではただのゆで卵が2個で6米ドル(1米ドル145円換算で870円)、サンドイッチが15米ドル(2175円)以上で販売されている。お手ごろ評価のレストランでもランチがチップ込みで3000円近くしたので、やりくりするのも一苦労だ。
半導体製造装置、自動車をはじめとした産業機械分野への供給を重視した。(出所:ヒノデホールディングスの資料を基に日経クロステックが作成) ヒノデホールディングス(以下ヒノデHD、福岡市)の中核会社、日之出水道機器(同市)の旗艦工場である佐賀工場(佐賀県みやき町)は、デジタル化と自動化により鋳物工場として最先端の生産ラインを整え、コスト生産性を4倍に高める大刷新を2023年4月に実施した。 「国内海外ともに鋳物工場の数が減少し、さらに中国などからの調達が不透明になる中で、国内の供給能力が増えたと顧客から評価されている」(ヒノデHD取締役常務執行役員の木塚勝典氏)。材料である鋳鉄の溶解、砂型の造型、注湯、冷却までを自動化し、鋳造品1個からの多品種少量生産を従来の半分のリードタイムで遂行する(図1)。
防衛費増額に伴う財源確保策として、自民党で突如浮上した「日本電信電話株式会社等に関する法律(NTT法)」の見直し議論がヤマ場を迎えている。自民党の「NTT法の在り方に関するプロジェクトチーム(PT)」は2023年11月中にも提言をまとめ、政府に申し入れる予定である。 10月19日には自民党PTが通信各社にヒアリングを実施し、直後にNTTと競合3社(KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)がそれぞれ記者説明会を開いた。競合3社はNTTが10月19日に公表した資料に対しても改めて問題点を指摘したいとして10月31日にも記者説明会を開いており、「場外」で全面対決の様相を呈している。 廃止ありきの流れに違和感 NTTはNTT法で定められた「研究開発の推進・普及責務」が国際競争力や経済安全保障の観点で支障があるため、撤廃を要望している。同じくNTT法で規定されている「固定電話を全国あまねく提供する責務
プログラミング言語「Python」の大規模イベント「PyCon APAC 2023」が2023年10月27日と28日の2日間にわたって開催された。1日目に行われた京都大学国際高等教育院の喜多一教授による基調講演を中心に、イベントの内容をリポートする。 PyCon APAC 2023は、1日目の基調講演「Why University Teachers Wrote a Python Textbook?」で幕を開けた。京都大学でPythonを使ったプログラミング教育を担当している喜多教授が、その実態について英語で講演した。 喜多教授は、主に大学1年生向けの教養教育の一環として、Pythonを使ったプログラミングコースを2018年に始めた。そのための教科書をつくり、2019年に公開した。誰でも無償でPDFをダウンロードできる。教科書は毎年改訂しているが、一般向けに公開したのは2019年版と2021
結局、何が大丈夫であれば原発は安全なのか――。 2023年5月に「GX脱炭素電源法」*1が成立し、国内における原子力発電所の60年超の運転が可能な制度となった。実は原発の運転期間は原則40年、最長60年と定められており、同法でもその点は変わらない。今回はこの枠組みを維持しながら、安全審査などで停止した期間分の延長が新たに認められることになった。 *1 GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法 正式名称は「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」。 同法の成立を受け、電力会社は「長期施設管理計画」を策定し、原子力規制委員会の認可を受ける流れとなる。具体的には、運転開始から30年を超える原発については、10年ごとに劣化の予測を実施すると共に、その劣化を管理する計画を定め、同委員会の確認をその都度、経ることになる。 今回の制度変更が、
米Intel(インテル)は、2015年12月の米Altera(アルテラ)の買収によって始めたFPGA(Field Programmable Gate Array)事業を仕切り直す。これまではデータセンターやクラウドに向けたハイエンド製品に傾斜していた。プライベートイベント「Intel FPGA Technology Day 2023」(米カリフォルニア州サンノゼ、2023年9月18日)においてミッドレンジやローエンドの新製品を発表し ニュースリリース 、FPGA市場全体をカバーすることを宣言した(図1)。買収前のAlteraに近い製品ラインアップを整え、2~3年後に行う計画のFPGA部門「Programmable Solutions Group(PSG)」のIPO(新規株式公開)を成功させることを狙う*1。 そもそもIntelがAlteraの買収によってFPGAを取得したのは、データセンタ
マイナンバーをめぐるトラブルが相次ぐ日本を尻目に、インドがデジタル分野で先進技術が一足飛びに普及する「リープフロッグ(カエル跳び)」を遂げている。原動力となっているのが「アーダール(Aadhaar)」。政府が12桁の固有番号を国民に付与する、いわば「インド版マイナンバー」だ。5歳以上のほぼ100%、インド固有識別番号庁(UIDAI)のWebサイトによれば13億人以上のインド国民がID登録を済ませたとされ、公的手続きや経済活動でも幅広く使われるようになった。インドをデジタル大国に飛躍させたアーダールの「正体」を解剖する。 モディ首相「インドのDXは空前のものだった」 2023年、中国を抜いて、人口世界一となったインド。近年はそのデジタル化の進展でも注目を集める。インドが議長国を務めた2023年8月の主要20カ国・地域(G20)デジタル相会合ではモディ首相がビデオメッセージを寄せ、「過去9年間
最近の核融合発電の開発競争で最速の核融合開始計画は、今のところ米国のスタートアップであるHelion Energyで、2024年。商用発電開始は2028年で、既に米Microsoftと売電契約まで結んだ。 もっとも、Helion Energyの方式は非常に斬新で、多くの“伝統的”な核融合研究者はその実現性に懐疑的だ。彼らが指摘する課題は少なくとも2つある。具体的には、(1)想定する“燃料”が、重水素(D)とヘリウム3(3He)で、“点火”させるのにはセ氏10億度前後の高温が必要なため、非常に大きなエネルギーを投入しなければならない、(2)核融合のエネルギーをどこまで効率良く電力に変換できるか未知数、の2つである。(1)と(2)をまとめて言い換えると、核融合で発電できる電力が、核融合を起こさせるのに投入するエネルギーを大きく上回ることが容易ではないのである。 一方、核融合発電の開始予定時期が
最近になってにわかに注目を集め始めた核融合発電技術だが、実用化は早くても2030年代半ば。やや保守的な評価では2050年かそれ以降という見方も多い。ところが、2024年にも発電を始めるというベンチャーが出てきた。 それはこれまでよく知られている大きく2つの方式、具体的には日本を含む数多くの国家が開発に参加し、フランスに建設中のITERのようなトカマク方式と、2022年11月に米国でレーザー光のエネルギーを超える核融合エネルギーが得られたレーザー核融合方式のどちらでもない、第3の方式「FRC(磁場反転配位)型プラズマ」に基づく注1)。核融合反応で中性子を出さず安全性が高く、簡素な設備で、しかも蒸気タービンを使わずに発電できる革新的な方式である。
2023年における最重要テクノロジーは「ChatGPT」に代表されるチャットボットAI(人工知能)だ。Webを検索せずともユーザーの調べたいことに答えてくれるチャットボットは、Google検索を脅かす存在になると見なされ始めている。 マイクロソフトが「ChatGPTベースのBing」を準備か 米メディアのThe Informationは2023年1月3日(米国時間)、米Microsoft(マイクロソフト)が2023年3月にも、同社の検索エンジンBingにChatGPTベースの機能を提供する可能性があると報じている。 ChatGPTベースのBingではユーザーが検索クエリーを入力すると、その結果としてURLのリストが従来のように表示されるだけでなく、ChatGPTが生成した回答文が出所表記付きで出力されるのだという。ユーザーはURLに飛んで原文を読み込まなくても、ChatGPTが生成した文章
EVSと呼ばれるイメージセンサー(右)の研究開発に各社が力を注いでいる。RGBイメージセンサー(左)と比べて、高速に駆動し、消費電力が小さいといった特徴を備える(出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ) 超高速と低消費電力を兼ね備えるイメージセンサーを、ソニーグループ(ソニーG)傘下の半導体事業会社であるソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)が開発した。スマートフォンやVR(仮想現実)/AR(拡張現実)機器の進化を加速させる可能性を秘める。 SSSが開発したイメージセンサーは、「イベントベースビジョンセンサー(EVS)」と呼ばれるもの。従来のRGBイメージセンサーと異なる原理で動作し、超高速に動体を検出する。消費電力が小さい、ダイナミックレンジが広いといった特徴を備える。 RGBイメージセンサーは、一定のタイミング(フレーム速度)で撮影する。それに対し、EVSは被写体の動きや周
2023年3月10日から映画「Winny」が全国公開される。不特定多数のユーザーがパソコン間でファイルを共有するP2P(Peer to Peer)ファイル共有ソフト「Winny」を開発・配布した金子勇氏が、2004年に著作権法違反ほう助の容疑で逮捕され、7年を経て2011年の最高裁判所判決で無罪を勝ち取ったという、実際の事件をテーマにした映画だ。 Winnyは東京大学大学院助手だった金子氏が2002年に開発。他のファイル共有ソフトと比べて匿名性が高く、国内を中心に多くのユーザーを獲得した。一方、映画や音楽などの違法アップロードが多発した他、2004年ごろにはWinnyを介して感染するマルウエアによって、企業が保有する個人情報や機密情報が漏洩する事件が相次ぎ発生した。同年5月、京都府警が金子氏を著作権法違反ほう助の容疑で逮捕したことで、IT技術者から「ソフトウエア開発の現場が萎縮するのでは」
基本技術が確立しているように見える定番商品でも、メーカーにとって改良の余地や懸案が残っている場合がある。限られた設計期間の中で、歴代の設計担当者が分かっていても解決に着手できなかった、意外にしぶとい問題だ。それでいて設計者が世代交代すると、新任設計者は実務を学んで経験を積むのに忙しく、懸案の解決はますます遠のく。 カシオ計算機の定番商品となっている電卓にも、改良の余地は残っていた。その1つを、2022年にベトナムや中南米で先行発売した関数電卓の新機種「ClassWiz FX-991CW」で解決。初めて電卓の設計を任された担当者が、問題を十分に認識していたベテラン設計者とともにコンピューターでのシミュレーションを駆使して取り組んだ。 しかも、開発設計段階での問題発生件数が旧機種に比べて半減した。経験の少ない新任設計者が担当する案件では、本来はトラブルが増えてもおかしくない。世代交代の促進と製
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