私は三十年ほど前に、日本人は如何(いか)にして渡って来たかという題目について所感を発表したことがあるが、それからこの方(かた)、船と航海の問題が常に念頭から離れなかった。その中の一つで是非ともここに述べておきたいのは、日本と沖縄とを連ねる交通路のことである。今では沖縄へ行くのには概(おおむ)ね西海岸の航路を取っているが、古くは東海岸を主としていたのではないかということを説いてみたいのである。 日本の南北の交通は、後(のち)に使わなくなった東海岸を余計に使っていたのではないか。古い航海には東海岸の方が便利であった。遠浅(とおあさ)の砂浜が多く、短距離を航海しながら船を陸に上げて宿をとり、話がつけば暫(しば)らくの間、あがった処(ところ)に滞在することもできた。むかしは一年に一回航海すればよかったので、年内に再びやってこようなどということは考えなかったのである。 日本では首里(しゅり)と那覇(