学力をめぐる論争のひとつに、教育社会学者の立場からの、考慮に値する意見があります。 それは、「社会階層間の学力格差」です。 そもそも日本は、ヨーロッパ諸国に比べて、社会的流動性が高いといわれてきました。 つまり、近代工業社会の形成が欧米より遅れた日本では、その形成と教育の普及が同時期に展開し、それによって、近代以前にどんな階層の出身でも、高い教育さえ受けることができれば、一般のホワイトカラーを初めとして弁護士や医者など、いわゆる社会の中の管理的職種に就けることができる社会だったのです。 これに対して19世紀から労働者階級の形成が行われたイギリスやフランスなどでは、教育という装置が普及する前に社会階層が形成されてしまい、その結果、近現代においても、社会的上層と下層との流動性は顕著には見られないという状況ができあがりました。 「教育が高い地位を約束するという」事実と、機会均等を大原則