今週の「サイバーリバタリアン」のテーマは「撤退」。今週もソニーがドコモの端末から撤退するとか、新銀行東京も撤退論が与党にも出てくるなど、撤退の価値が話題になっている。 先週の記事では、マイクロソフトが大きくなりすぎたのがよくないと書いたが、今回のコラムでは、日本の携帯電話メーカー11社を合計してもノキアの1/3にもならない「過小規模」が競争力の弱い原因だと書いた。両者は矛盾しているようだが、そうではない。前者は、OSとアプリケーションのような異なる部門を社内にもって部品を自社生産することによる範囲の経済、後者は固定費が大きい場合、大量生産することによって単価が下がる規模の経済の問題だ。 IT産業では、部品がモジュール化されてグローバルな市場が成立しているので、範囲の経済はほとんどない。他方、規模の経済は多くの工業製品にみられるが、IT産業ではソフトウェア開発のような固定費が大きくなる一