2015年6月29日 著 人は誰しも、そこそこの時間を生きていれば、忘れられない瞬間の一つや二つ、きっとあると思います。まだ大学3年生だった20年前の夏、サークルで1年間をかけて設計・製作・試験をしてきた人力飛行機に乗り込み、滋賀県彦根市は松原水泳場・鳥人間コンテスト会場につくられた高さ10メートルのプラットフォームから飛び立とうとペダルにかけた足に力を込めた瞬間というのが、自分にとってまさにその「忘れられない瞬間」の一つ。 もちろん、ペダルをこぎ始めてから機体が琵琶湖に着水するまでの2分ほどのあいだも、いまだ鮮明に記憶に焼き付いてはいるけれど、ペダルをこぎ始めるその瞬間というのは、言わば不退転の決意をする瞬間。いったん機体が加速してしまえば(滑走距離は約7メートル、下向きに3.5度の傾斜がついている)発進をやり直すことは許されず、そして次に足の動きを止めたときには、大勢のメンバーが心血を