評者:秋朝礼恵(あきとも・あやえ) 東海大学文化社会学部教授(※2023年4月より) 福祉国家スウェーデンの構築における経済学者の役割とは著者は、経済学者らの理論や思想のみならず、膨大な資料を活用して人物像、人間関係、政治や社会との関係についても分析し、それらを丹念に鮮やかに描きだすことに成功している。本書は、世代の異なる経済学者たちの思想面での対立と政策面での知的遺産の継承を経糸に、同時代に生きた経済学者の交流を緯糸にして緻密に編まれた重厚な織物のようだ。 世代の異なる経済学者たちとは、ダヴィッドソン、ヴィクセル、カッセル、ヘクシャーらからなる「第1世代」、ストックホルム学派といわれ、本書の中心に置かれるリンダール、ミュルダール、オリーン、ハマーショルドらの「第2世代」、両者の「中間世代」に位置するバッジェやオカーマンらである。 第2世代のミュルダールらは第1世代とは思想面で対立したが、
![書評:藤田菜々子著『社会をつくった経済学者たち』(経セミ2023年4・5月号より)|経済セミナー編集部](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/fdae39ddc5a29ebc87a275ca7f095674e12a2cba/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fassets.st-note.com%2Fproduction%2Fuploads%2Fimages%2F102357596%2Frectangle_large_type_2_254da1e1ee3a5bd6a373255244e34248.png%3Ffit%3Dbounds%26quality%3D85%26width%3D1280)