真偽の不確かな情報がSNSを通じて駆け巡り、いわれのない憎悪や中傷が束となって人の心を痛めつける。そんな状況を「言論の自由」を根拠に放置していいのか。メディア史研究者・佐藤卓己氏(64)の答えはこうだ。言葉は人と人がつき合うためにある。他者の存在を忘れた表現に、無制限の自由は認められない。SNS上の偽情報やヘイトスピーチをどの程度まで規制するのか。言論や表現の自由との折り合いのつけ方が、いまや世界中で議論の的となっている。

【3月14日 AFP】ドナルド・トランプ米政権のカリ・レーク特別顧問は13日、米政府出資の国際報道機関を統括する「米グローバルメディア局(USAGM)」と、世界三大国際通信社であるフランス通信(AFP)、ロイター通信、AP通信との間に結ばれた長年の契約の解除を提案したと発表した。 ジャーナリストから政治家に転身したレーク氏は、トランプ氏の熱烈な支持者。X(旧ツイッター)への投稿で「国民にニュースを伝えるために外部の報道機関に金銭を支払うべきではない」と述べた。 レーク氏は先月、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)やラジオ・フリー・ヨーロッパ(RFE)、ラジオ・フリー・アジア(RFA)など、外国向けに情報を発信し、外国の検閲と闘う国際放送機関を統括するUSAGMの特別顧問に就任した。 レーク氏は「私はきょう、USAGMの高額で不必要なニュース配信契約の解除を提案した。それにはAPやロイター、AF
このnoteをご覧になってくださっている方には、ファクトチェックやメディアが誤・偽情報からの防御のつもりで行っていることが逆に誤・偽情報を広げる結果になっていることをご存じと思う。それを裏付けるロシアのデジタル影響工作「オペレーション・オーバーロード(Operation Overload)」をフィンランドのCheck First社が暴露した。 オペレーション・オーバーロードはファクトチェック団体、大手メディア、研究者に誤・偽情報を暴露させ、それによって誤・偽情報の拡散を行うことを目的した作戦だったのだ。そして、その目論見通り、誤・偽情報はターゲットとなったファクトチェック団体や大手メディアの報道後、拡散を広げた。 Operation Overload、 https://checkfirst.network/operation-overload-how-pro-russian-actors-
「批判的メディアの購読料停止」「番組素材の提出命令」――ドナルド・トランプ政権の対メディア攻勢が激化している。 ホワイトハウスの報道官は2月5日、連邦政府による政治メディア「ポリティコ」への購読料支払いを停止すると表明した。 連邦政府による購読料支払いを巡っては、ほかにもニューヨーク・タイムズなどのトランプ政権に批判的なメディアが次々と標的にされている。 また、通信放送を所管する米連邦通信委員会(FCC)は、米4大ネットワークの一つ、CBSの看板番組「60ミニッツ」が、米大統領選最終盤に行った民主党候補、カマラ・ハリス前副大統領のインタビュー素材の提出を命じ、同局は2月5日、これに応じた。 CBSは、このインタビューを巡ってトランプ大統領が起こした100億ドル(約1.5兆円)の請求訴訟で、和解交渉に入ったとも報じられている。 やはり米4大ネットワークのABCは、トランプ氏からの訴訟で、1,
中居正広氏に関する一連のスキャンダル報道を主導してきた週刊文春は、昨年12月26日発売号(1月2・9日新年特大号)で、事件当日「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」としていたが、1月8日発売号以降は「X子さんは中居に誘われた」「A氏がセッティングしている会の"延長"と認識していた」と修正しているという「説明文」を電子版記事に記載し、1月27日、配信した。【文末に続報あり】 この「説明文」が掲載されたのは、「橋下徹『フジ説明拒否への疑問と文春への注文』|中居・フジ問題『私はこう考える』」とのタイトルがついた電子版オリジナル記事の文末。1月27日午前中に配信されたが、公式アカウントのX投稿に修正内容の説明はなかった。同日午後4時からフジテレビ経営幹部による記者会見が行われた。 この電子版記事は、弁護士の橋下徹氏が、週刊文春が第一弾記事(12月26日発売号)から第二弾記事(1月8日発売号)にか
──ハリウッド映画では、AIは「主人である人間に歯向かう悪党ロボット」という描かれ方をしています。その最たる例は『ターミネーター』や『ブレードランナー』です。これは私たちが思い描くべき正しいAIのイメージなのでしょうか。 ハラリ いいえ。まったくもって誤解を招きかねない描き方です。ハリウッドはとても重要な役目を果たしてきました。まだ誰も想像だにしていないころから、人々の関心をAI問題に向けさせてきたわけですから。 とはいえ、AIを巡るハリウッドのシナリオは誤解を招きかねないものです。AIに操られた巨大ロボットが反逆を起こす兆候などまったく見られませんよね。 ただ、ハリウッドのせいで、『ターミネーター』世代の多くはそうしたAIのイメージを鵜呑みにしています。そして、ターミネーターやスカイネット(『ブレードランナー』で反乱を起こす人工知能)のようなAIが出現する様子はまったくないので、何の心配
──AIはいまだ原始的な段階にあると言いますが、私たちはもうすでに、AIが及ぼす影響力の規模と範囲を目の当たりにしていると言えませんか。 ハラリ そのとおりです。ここでいうAIの影響には、未来のことに限らず、AIがすでにもたらしたことも含まれています。少なくとも、アルゴリズムによって動くソーシャルメディアが世界中の民主主義や社会を不安定化させているという大きな災難が、私たちにはもう降りかかっています。 自ら決断を下すエージェントを世に解き放ったときに起きる事態を、人類が初めて体験していると言えるでしょう。 XやYouTube、Facebookなどのソーシャルメディアが使っているアルゴリズムは、非常に原始的です。しかし、生まれたての初代AIであるにもかかわらず、歴史に大きな影響を与えています。 そういったソーシャルメディアのアルゴリズムは、ユーザーのエンゲージメントの向上や、Facebook
JR渋谷駅前で掲げられたウクライナ国旗=東京都渋谷区で2023年5月21日午後1時57分、藤井達也撮影 来年は「戦後80年」になります。日本を取り巻く地政学的な環境が激変する中、平和とは、民主主義とは、を改めて見つめなおす機会でもあります。来夏まで断続的に行う委員会(座長=井上寿一・学習院大教授)形式の座談会は、佐藤卓己・上智大教授の基調報告を元に、戦前・戦中、そして今にいたる「メディアと政治」の議論を始めます。【司会は前田浩智主筆、構成・鈴木英生】 <関連記事> 「メディア議員」が導いた先の大戦 第1回「メディアと政治」座談会 日米開戦たたえた議員に「よくぞ言ってくれた」 SNS時代なら 若者の戦死に耐えられない現代日本 少子化の中国、10年後の姿 来年は昭和100年でもある ――まず、この座談会企画全体の位置づけを井上さんから。 井上寿一氏 終戦から長い年月がたち、「戦後○年」という時
兵庫県知事選候補の個人演説会会場に設置された撮影機材。ユーチューブで配信し、多くの有権者に訴えを届ける狙いがある=11月10日 シェークスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」で、シーザー(ユリウス・カエサル)を元老院の大広間で刺殺したブルータスは、ローマ市民にこう訴える。シーザーは共和制を廃し、独裁者となる野心を持っていた。だから、ローマのためにシーザーを殺さなければならなかったのだ、と。「おれはシーザーを愛さぬのではなく、ローマを愛したのだ」 理路整然とした演説に市民は納得し、「ブルータス万歳」の歓呼に包まれる。この後、アントニーが自分にも追悼の言葉を述べさせてほしいと演壇に立つ。 アントニーは「ブルータスがしたことは正しい」と言いながら、シーザーがいかに誠実、公正で、ローマ市民のことを考えていたのかを、具体的な例を交えて繰り返し語った。いつしか聴衆に、そんなシーザーが独裁者になる野心を抱
アメリカ大統領選挙でトランプ前大統領の当選に貢献した1人とされるのが実業家のイーロン・マスク氏です。 マスク氏はトランプ氏支持を明確にし、みずから所有する旧ツイッターの「X」で、選挙に関する投稿を700件以上繰り返し、その閲覧回数はあわせて170億回に。 中には誤っているとされた情報もありましたが、マスク氏の投稿は修正されないまま拡散しました。 なぜなのか、独自に分析しました。 異能の実業家 イーロン・マスク氏 電気自動車メーカーの「テスラ」や宇宙開発ベンチャーの「スペースX」のCEOをつとめる異能の実業家、イーロン・マスク氏。 ことし7月、銃撃事件が起きた直後にトランプ氏支持を明確にしました。 Xのフォロワーは2億を超え、世界で最も多いとされています。 そのアカウントでトランプ氏をたたえ、ハリス氏を批判する投稿を繰り返しました。 さらに、署名活動に応じた有権者に、投票日まで抽選で毎日1人
今年3月、「その『エモい記事』いりますか」と題した社会学者の西田亮介さんの記事が論争を呼んだ。執筆の背景には「最近の新聞記事は個人の感情に訴えるようなエピソードを優先しすぎて、エビデンスの提示やデータの分析が疎かになっているのではないか」という問題意識があったという。応答記事を執筆した大澤聡さんと新聞が抱える問題を語り合った――。 個人の感情に訴えるエピソードを優先しすぎではないか 【大澤】西田さんが朝日新聞デジタルのサイト「Re:Ron」に寄稿された〈その「エモい記事」いりますか〉という記事が大きな反響を呼びました。私も月刊誌『Voice』(7月号)に〈再「小新聞」化するジャーナリズム〉という論説を寄せて、歴史的な観点から応答せずにはいられませんでした。記事の経緯からお聞かせいただけますか。 【西田】あの記事は、ぼく自身がもともと持っていた問題意識から書いたものです。最近の新聞記事は個人
テレビや新聞など伝統的なメディアの信頼性を維持しつつ、時代に適応したジャーナリズムのあり方を模索する必要がある (C)wellphoto/shutterstock.com ジャーナリズムの危機が叫ばれて久しいが、原因はどこにあるのか。米メディア界の精鋭たちが真剣な議論を重ね、いつの時代も変わらないジャーナリズムの「10の原則」を導き出し、今後のジャーナリズムとメディアのあるべき姿を提示したのが『ジャーナリストの条件 時代を超える10の原則』(ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著/澤康臣訳)だ。ジャーナリズムを学ぶための基本書として世界中で読まれ、何度も改版して内容を磨き上げている。今回翻訳された最新第四版では、インターネットやSNSの普及によるメディア環境の劇的な変化も捉え、日本のメディアにとっても示唆に富む。政策とメディアを専門とし、最近では「エモい記事」批判でも注目を集めた日本大
米Xのオーナーであるイーロン・マスク氏は7月26日(現地時間)、Xユーザーがポストしたカマラ・ハリス副大統領を揶揄するディープフェイク動画をパロディだという注釈なしにXに再ポストした。 この動画は、ハリス氏が25日に公開した選挙キャンペーン動画を編集したもので、ハリス氏の声のナレーションが改変されている。同氏の声で、「私は女性であり、有色人種でもある。だから、もしあなたが私を批判したら、私はあなたが性差別主義者であり人種差別主義者であると言う」などと語り、自らを「ディープステート(闇の政府)の操り人形」だとしている。 動画のオリジナル投稿者は「Mr Reagan(@MrReaganUSA)」というYouTuberで、この投稿者は動画に「パロディだ」と添えているが、マスク氏は「これはすごい(泣き笑い絵文字)」とのみコメントしている。 日本時間の29日午前6時現在、オリジナルポストは約66万回
■Re:Ron連載「西田亮介のN次元考」第8回 最近の若い候補者は脊髄(せきずい)反射的かつ非常識的で目に余る。SNSやYouTube漬けの若者もこんな候補者を支持してばかりでいかがなものか――。 先…
『アステイオン』1986年の創刊号から、初期の原稿をたどり「ああ、寄稿者の多くがご逝去されていて、本当によかった」と思ってしまった。あの方々がいま生きていらしたら、誰か一人くらいは民衆に殺されていただろう。 普段、イエロー・ジャーナリズムで日銭を稼いで暮らしている私だが、たまに堅気の文も書く。ちょうど数日前に初稿をあげたのは、日本の「弱者男性」に関する特集で、日本人の3人に1人は、障害や貧困などに苦しめられる、弱者男性によって占められているという話であった。 つまり、男性の過半数は何らかのハンデを背負って生きているという推計である。そんな彼らが、当時の好景気に後押しされた教養主義にあふれる創刊号を目にしたら、革命の狼煙があがったやもしれぬ。 2号には袴田茂樹氏の「『知識人群島』ソ連」が掲載されており、そこにはロシアの民衆へ、同情的な言葉が並ぶ。 「『不足経済』の状況下では、商品や物的環境は
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