現行憲法の最大の問題点は、「個人」のみで「国家」や「家族」が見えてこないことである。 国家について言えば、個人を絶対視し、国家も個人の集合体とみる社会契約説に立脚している。 これは、J・ロックの市民政府論を想起させる憲法前文から明らかであろう。 また、憲法第24条は家族について触れているが、そこでも個人を絶対視し、家族よりも個人を優先するのが憲法の考え方である。 これでは「国を愛する」とか「国を守る」といった発想は出てこないし「家族を尊重する」という思想も生まれない。それどころか、こうした考え方は憲法の基本原理に反すると批判され、否定されてきたのが戦後の風潮であった。 他方、「国家」と権力機構としての「政府」を混同し、国家とは権力で必要悪であるかの如き議論が憲法学界でも支配的であった。■ ■ ■ そこで「国民の憲法」では、前文および第一章「天皇」で、まず歴史的、伝統的な「国民共同体としての