一般的に、政府の大きい小さいは "予算規模" で区別される。けれど、ブログ界隈で議論される政府の大きい小さいの場合は必ずしも予算規模の話ではなく、政府を構成する組織・人員の大きさが焦点になっている場合が多い。 「小さな政府」を主張すると、(予算規模の話だととられて)「福祉の切り捨てだ」「弱者の切り捨てだ」「所得の再配分ができない、格差を増大させる」と言われたりするけれど、所得の再分配・福祉と(規模の意味で)小さな政府は両立可能だと思う。ただ、それは小さな政府というより「シンプルな政府」なんだと思うけれど。 たとえば、ベーシックインカムや負の所得税を導入して年金・保険・育児教育補助を根本的に整理しなおして厚生労働省の役割を1/5以下に縮小したら、それは予算的には「大きい政府」だけど、機能的には「小さな政府」であり、よって「シンプルな政府」だ。予算も機能も福祉もない"夜警国家"へ立ち返るのはや
というワケで今日は、朝日新聞の、先週の土曜日版の記事を引用しながら、「ベーシックインカム(BI:Basic Income)」について、です。「小さな政府としてのベーシックインカム」新党日本(まだあるのか?)の田中康夫によれば、ミルトン・フリードマンもアントニオ・ネグリも支持しているのだ、ということで、まぁ、新自由主義者も支持してるんだ、ということが言いたいワケですよね。もちろん俺は、ここにも何度も書いているとおり、アンチ・ネオリベなんですが、今日はあえて、“カウンターパート”の皆さんに「魅力的な提案ですよ」というスタイルで書いていこうかな、と。 「ベーシックインカムってそもそもなんだ?」という方は、ぜひぜひ、はてなキーワードを参照してみて下さい。(一応、ウィキペディアの当該項目も>>>こちら) で。記事っつーのは、こんな感じ。とりあえず、今のところの議論は「月々8万円を個人に対して支給する
欧州の経済危機では、財政と金融の危機が複雑に絡み合っている。ここ数年の金融危機のために欧州の銀行システムが脆弱になっていたところに、ギリシャの財政危機が重なり不安が市場に広がった。欧州経済は5月の混乱に比べれば小康状態になったが、「出口」はまだ遠い。今後かなり長いスパンで、ユーロの信認をめぐって不安が付きまとうだろう。 財政問題を抱えている点では、日本も同じである。日本経済は昨年3月に底を打ち、輸出主導の景気回復を続けているが、予断を許さない状況だ。そんな中、新たに発足した菅直人政権は「成長と財政再建の両立」を打ち出した。 ◆◆◆ 経済成長の原動力は需要の拡大と供給サイドの技術進歩である。まず需要面では、日本には高齢化の巨大な波が襲っているため、内需が短期間で劇的に拡大するとは期待できない。当面は、昨年末の「新成長戦略」の基本方針でも指摘しているとおり、アジア市場との一体的な成長を目指すこ
モリタクがまた妙なことを言っている。もうこの人はほっといても良いのだけど、僕のこと を意識した反論くさいし、何よりこういうのを野放しにするのはやっぱり教育上よろしく ないと思うので、ここは一つ後輩として介錯してやろうと思う。 彼はOECDの雇用統計を元に、「日本の解雇規制は厳しくない」と述べる。 確かに、このデータを見ると、ドイツやフランス、そしてオランダなどよりも日本の ポイントは低く、ヨーロッパ諸国よりは解雇しやすいと思うかもしれない。 だが、この「雇用保護の厳格性」(Strictness of employment protection)を文字通りに 受け取ってはならない。 以前も述べたとおり、この数値は以下の3つの指標を総合したものだ。 1. 手続きの不便さ 2. 会社都合解雇の場合の告知期間と補償額 3. 解雇の難しさ 法律上は、一ヶ月前の告知で一か月分の賃金さえ払えばいつでも誰
マニフェストをひと通り見ていくと、一種の流行りがあるのがわかる。 今回の流行は「増税」。それも消費税引き上げ、法人税引き下げが一つのトレンドとして見て取れる。従来はタブーとされてきた増税論議が一気に噴き出したのは、有権者の側で財政危機に対する懸念が高まったためだろう。 >>29歳の働く君へ・記事一覧 自民党・みんなの党・社民党は「流動化三銃士」 要するに、政治というのは有権者の鏡であり、マニフェストを見れば自分たちの姿がぼんやりと見えてくるのだ。良い悪いは別にしても、下手なニュースを読むより社会の流れがよくわかるので、無党派層を意識している政党のものは読んでみることをおススメする。 それと、もう一つ重要な変化があった。自民党が 「解雇規制の緩和」 と明記したことだ。このことは、少なくとも自民党という前与党がマニフェストに取り入れるほど、労働市場の流動化論が力を得ているという事実を示している
参院選が告示され、選挙戦が始まったが、今ひとつ盛り上がらない。昨年の総選挙には「政権交代」という大きな争点があったが、その結果生まれた鳩山政権の迷走ぶりに有権者が白けてしまい、菅政権には大した期待をもっていない。 最大の争点だった消費税も、自民党が10%という数字を出して「責任野党」のカラーを出したと思ったら、民主党がそれに相乗りして「超党派で協議しよう」と言い出した。「消費税みんなで上げれば恐くない」というわけだろうか。他方、法人税も民主・自民両党が引き下げを言い出し、これも争点にならない。 そんな中で注目に値するのは、自民党がマニフェストで「解雇規制を緩和すると同時に、企業における柔軟な経営を行える環境を整備するなど、企業の持続による雇用の安定につなげます」という政策を打ち出したことだ。 みんなの党も「民主党政権の派遣禁止法案は、かえって働き方の自由を損ない、雇用を奪うものであり反対」
前に書いた、電子通貨の導入手順http://d.hatena.ne.jp/su_rusumi/20091207が、実は、「通貨の匿名性に課税する」方法だということに、気づいた。 つまり、 ◆消費税を10%増税する ◆電子通貨決済の場合、10%のポイントを割り戻す これだと、現金決済だけに課税される。ということは、半自動的に、法人は電子通貨決済が義務付けられる。領収書の査定も検索で一瞬で済む。現金決済の割合が多ければ、それだけで、「怪しい企業」「怪しい人物」確定だ。これで増税対象になるのは、「通貨の匿名性」に依存するプレーヤーだ。 貨幣の機能は、教科書的には、 ・価値の保存 ・価値の運搬 ・価値の尺度 ・価値の媒介 と4つある訳だが、貨幣の機能には、実は、もうひとつ追加するべきだと思う。「価値の匿名化」だ。お金には名札がついていないが故に便利だ。貨幣は、使用するに際して入手先を説明する必要が
何度も言うが、消費が経済のボトルネックなのに、消費税を増税するのは、根本的に間違っていると私は思う。経済を回すには、ボトルネックである消費を刺激する必要がある。貯蓄が損になり、消費が得になる方向で、税制は改正されるべきだ。 そこで、今回のエコポイントだ。これを一種の《マイナスの消費税》と見立ててみる。以下空想だが、もしエコポイントを全ての商品に包括的に導入してみよう。服だろうが、本だろうが、食品だろうが、携帯の電話代だろうが、すべての消費にポイント(期限付き)が付く。消費は刺激されるし、消費税の逆進性がマイナスになって、低所得者(高消費比率者)ほど恩恵が大きい。経済構造の観点から言って、かなり理想的な景気刺激になるのではないだろうか? 少なくとも道路や橋を作るより良い。 ただし、今回のエコポイントのような、耐久消費財限定ではダメだ。なぜなら、これは貯蓄した者勝ち、「今まで我慢したもの勝ち」
銀行預金に課税して「金利がマイナス」になるようにしてはどうかというアイデアを以前のAGORAの記事(「マイナス金利」政策はいかが? )に書いて以来、いろいろご質問やご意見をいただいたので、今回はQ&A形式でそれらにお答えしたいと思います。 (超長文なので、興味のある項目だけご覧頂ければと思います。) Q1.預金課税とは何か? A1.週刊エコノミスト誌2002年2月5日号に預金課税の構想を発表したものが当初。 http://www.tez.com/papers/p_2.htm (跡田直澄教授のコメントはこちら。) http://www.tez.com/blog/archives/000544/atoda_shinzei.html 前述のアゴラの記事もご参照のこと。 https://agora-web.jp/archives/799199.html その後、いただいた意見を元にテクニカルな面の
アメリカの大統領予備選は、ヒラリー・クリントンが土俵際で踏みとどまり、おもしろくなったが、特に民主党の演説でうんざりするのは"change"という言葉がやたらに出てくることだ。「変革」と訳しているメディアもあるが、これは小規模な改良も含む幅広い概念なので、「変化」と訳したほうがいい。 内田樹氏は、これを変革と訳して「私は変革には反対」で、必要なのは社会システムの断片(ピースミール)をとりあえず「ちゃんと機能している」状態に保持する「ピースミール工学」だといっているが、これはポパーの(誤った)受け売りだろう(*)。ポパーは『歴史主義の貧困』や『開かれた社会とその敵』で、社会主義のようなユートピア社会工学を批判し、ピースミール社会工学を提唱したが、彼はchangeを否定したわけではない。また社会工学という概念については、ハイエクが「設計主義の一種だ」と批判し、自生的秩序を提唱した。 内田氏
財政が危機に直面する中、2011年度予算で子ども手当5兆円を満額支給するかどうかで、民主党がゆれている。民主党の国民生活研究会は、現金給付は2010年度と同じく月額1万3000円とし、残りは保育所の整備など、教育・子育てに関する「現物支給」にするという案を提言したが、長妻厚生労働相は「全額現金が望ましい」と主張し、まだ結論が出ない。 これは「財源不足で福祉予算をケチった」と受け止められがちだが、保育行政を考え直すいい機会である。以前にも私が「アゴラ」に書いたように、日本の保育所は、国と都道府県と市町村から三重に補助を受け、児童受け入れの優先順位も保育料も所得(納税額)で決まるため、所得を捕捉しにくい自営業者の子供に片寄るなど、問題が多い。 このように社会主義的に運営されているため効率が悪く、地域別に割り当てが決められているため、都市部では人口増に保育所が追いつかない。保育所に申し込んで入れ
税の枠組みを抜本的に再検討する時 では、法人税も所得税も引き下げるとどうなるか。両方とも減税したら、どこから税金を持ってくればいいのか。わたしは、税金を取る理論的枠組みの再検討をいままでにあらゆる機会をとらえて提案している。大きく分けて二つのカテゴリーがある。 一つは産業政策と連動した基盤を作るための税金。道州制に移行した場合には道州税として付加価値税を提案している。いまの消費税と同じようなものだが、産業のあらゆる段階でつけられる付加価値の5%くらいを想定している。GDPは国民の生み出す付加価値の総和だから、500兆円のGDPの5%というのは25兆円の税収となる。これが道州によって徴収され、産業基盤の構築、人材育成などに使われる。産業を伸ばさない限りこの税収は増えない。国からの補助金で無駄な基盤を作るのではなく、自分の考えた産業育成に必要な基盤を作るために投資するから、無駄もなくなる。道州
実は日本のマクロ経済問題を解決するパーフェクトな方法があります。 だいたいこういうものは既得権益層からつぶされるのですが、今回のものにかぎってはそういう問題もいっさいありません。 それどころか政治家も官僚も大企業もベンチャー企業も国民もみんなが幸せになれる方法です。 またこの方法が実行されれば、日本は世界最先端の金融IT立国として世界中から尊敬されます。 技術的にもまったく実現可能です。 そのうえ日本の犯罪をいっきに撲滅することさえ可能なのです。 その方法とは物理的な日本のお金をすべて廃止して、完全に電子マネーに移行することです。 慢性的な日本経済の停滞に長引くデフレに膨れ上がる政府債務。 これらの経済問題の根本的な原因は日本の成長率が低いことであると説明しました。 ところが成長率をあげるのはそんなに簡単ではありません。 そして成長率が低いがためにゼロ金利になってしまったので、日本経済は有
2010年03月16日12:09 カテゴリ経済 正しいセーフティ・ネット きのう片山さつきさんとの対談で、ツイッターの反応も同時進行で見たのだが、若者の福祉に対する不安が強かった。税金や年金が団塊以上の世代に食い逃げされ、自分たちには重税と不安定雇用が残るのではないか、という絶望が彼らの消費を抑制し、不安をさらに増している。 日本のように成熟した社会では、急速な成長を求めるのではなく、福祉による「幸福度」の向上を求めようという民主党の考え方はわからなくもない。しかし、それならまず手をつけるべきなのは、不合理な社会保障制度だ。湯浅誠氏のいうように、現在のセーフティ・ネットは穴だらけで、もっともネットを必要とする零細企業が失業保険を払っていないため、職を失うと「すべり台」のようにホームレスになってしまう。 他方で、福祉の負担を企業に押しつけてきたため、大企業の付加給付や年金負担は賃金総額を上回
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く