――『ジョゼ虎』の劇場公開から半年以上が経ちますが、あらためて本作を振り返っていかがでしたか? タムラ そうですね。本作は全体的に丁寧に作られてはいるけれど、パッと見は演出や物語が革新的なものではない。いわゆる見たことのない強烈な視覚体験を得られるようなタイプの映画ではないと思っているんです。しかし、僕自身が一番力を注いだのはそこではありません。どちらかというと『ジョゼ虎』はバランスで勝負しようと思った作品なんです。むしろバランスこそが突き抜けるよう目指しました。たとえば、「絵」と「物語」のバランス。 ――たしかに、『ジョゼ虎』はビジュアルと物語の両方が非常に高いクオリティだったと思います。 タムラ 絵にこだわりすぎると話がないがしろになる。話にこだわると絵が固くなる。どうしてもどちらかに片寄ることが多いんですよ。それはアニメで物語を描く表現者が抱える課題のひとつだと思っています。ほかにも
生まれつき足が不自由な女性・ジョゼと、ごく普通の大学生・鈴川恒夫の心のふれあいを描く劇場アニメ『ジョゼと虎と魚たち(以下、ジョゼ虎)』。本作のBlu-ray&DVDの発売にあわせて行ったタムラコータロー監督のインタビューの第2回は、絵作りに対するこだわりを中心に聞いた。 ――本作はジョゼが海で泳ぐ空想をするシーンなど、ビジュアルが印象的なシーンが多く描かれています。絵作りにおいて、とくに念頭に置いたのはどんなことでしょうか? タムラ ビジュアル面で言うと、『ジョゼ虎』は青春作品なので、恒夫とジョゼの主観から見た世界を視覚的に表現したいと思ったんです。本当は世界は広いんですけど、恋するふたりにとっては自分たちが世界の中心。キラキラして見えるけど、周囲はよく見えていない。そんなバランスで描きたいなと。カメラのピントがお互いの姿にピッタリ合わせてあるせいで、まわりは少しピンボケに見えている感じと
――『ジョゼと虎と魚たち』をアニメ映画化することになった経緯について教えてください。 タムラ KADOKAWA内で久々に文芸作品をアニメ映画化しようという流れがありまして、同社の笠原周造プロデューサーが紙袋いっぱいに用意してくださった小説に片っ端から目を通していたところ、田辺聖子さんの短編小説『ジョゼと虎と魚たち(以下、ジョゼ虎)』が目に留まりました。この作品、タイトルだけ見ても、どんな内容なのかまったく想像がつかなくて。気になって読み始めたら、なんと30ページにも満たない短編だったんですね。しかも起承転結でいう「承」のあたりで終わっているというか。「主人公のふたりはこのあとどうなってしまうんだろう……?」と、想像力を非常に刺激される作品でした。そして、なによりジョゼのキャラクターがとても魅力的に思えたんです。このお話を今の時代に置き換えて長編に再構成できたら、きっと面白いものが作れるので
2020年12月25日に公開となるアニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌「蒼のワルツ」と挿入歌「心海」を手がけたEve、コンセプトデザインを担当したイラストレーターのloundraw(FLAT STUDIO)、そしてタムラコータロー監督の鼎談が実現した。 これまでのMVでもクリエイターとの共同作業により音楽とアニメーションが深く結びついた作品を発表してきたEve。イラストレーターとしての活躍に加え、ユニット・CHRONICLEを率いて物語と音楽とアートがシンクロした表現を開拓しているloundraw。以下の鼎談でも明かされているが、両者にとって、リモートによって行われたこの取材が初の顔合わせの機会だったという。 『ジョゼと虎と魚たち』にそれぞれがどう関わり、どんなイメージが共有されていったのか。映画の制作の裏側、12月23日にリリースされたEveの新作『廻廻奇譚 / 蒼のワルツ』
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く