Hさん(70)は、不動産会社の経営者として若いころからバリバリ働いてきた。4歳年上の妻との間に2人の娘をもうけたが、「仕事人間」を自負し、家庭のことは一切妻に任せきりだった。9年ほど前、その妻に異変が起きるまでは――。 病魔との闘いの日々 妻は息苦しさを訴えるようになり、病院で精密検査を受けると「特発性間質性肺炎」と診断された。原因不明の難病で、5年生存率は37%、10年生存率は22%という。 その時から、Hさん夫婦の病魔との闘いが始まった。妻は治療薬の副作用で骨部への血流が悪くなり、長時間歩くことが難しくなった。買い物も近くの商店街ぐらいしか出かけることができず、何をするにも休み休みという状況になった。 Hさんは妻との時間を大切にしたいという思いから、会社の代表を降り、後は若手に任せることにした。 旅行はできなくなり、Hさんの運転で近場の温泉地に行くことが大きな楽しみとなった。リハビリを
