131 食卓の縁起に関する研究 Ⅰ 1.緒言 年中行事や冠婚葬祭の食卓は、単調になりが ちな食生活に刺激を与える。食に関する縁起か つぎや、ことわざ、言い伝えは、ハレの食卓ば かりでなく、日常にも生かされている。松本 (2005)は年中行事が生活文化の根幹をなすも のであることに着目して、特に今日まで伝承さ れてきた行事食について調査し、現代の家庭に おける非日常食について考察している1) 。塩谷 (2005)は正月料理の継承について詳細な調査 を行い、多様化、個別化しつつも、正月は家族 の絆を確認し、食文化を継承する貴重な共食の 機会であることを指摘した2) 。非日常的なハレ の食の多くは無病息災、豊作祈願、子孫繁栄、 家内安全、大願成就等などを期待して供される ので、縁起がよいと言われる料理や素材が用い られることが多い。中矢等(1994)は、食い 合わせに関する調査を通して、長く言い