この思い出も、あなたとの最後の出会い、最後の別れの前後まで一足飛びしなければなりません。1986年秋から87年春にかけてのことです。 86年の10月から2年間の予定で、私はパリ国際大学都市日本館館長という激務についておりました。30年前留学生としてお世話になった施設なので、恩返しのつもりで引き受けた仕事でした。その館長室に、突然あなたからお電話をいただいたのは、12月初めのことでした。パリにいらっしゃるとは存じあげなかったので驚きましたが、会いたいというお言葉を嬉しく伺いました。「冬はモロッコですごすつもり、でもまだしばらくパリにいるので」とのことでした。翌日早速お訪ねしたのはいうまでもありません。 あの年、ヨーロッパとモロッコへのあなたの旅は、ジェリーを偲ぶ旅だったと思います。1年ほど前からエイズに苦しんでいた彼は、86年2月、パリの病院で孤独な死を迎えたのでした。短い生涯の最後の1年、