最初に宮崎駿さんと会話してから1か月がたちました。宮崎監督は知らない人と会うのが好きではないそうです。ですから、僕がジブリに来てからというもの、毎日のように顔を出していたプロデューサー室にも現れなくなったそうです。僕は侵入者なのだと悲しくて申し訳なくなりました。 とはいってもジブリは宮崎監督の縄張りですから、ちょっと遠くのほうに姿が見えたり、声が聞こえたりするのはしばしばです。で、だんだんと近づいてきたりもするのですが、結局、プロデューサー室は通り過ぎちゃって立ち止まってくれないのですね。だから、なかなか会話してもらえるチャンスがありません。 ある天気のいい昼間のことです。プロデューサー室にはバルコニーに出られる扉がついていて、外が広くて気持ちいいのです。うーんと背伸びしながら歩いていたら、僕が出てきた部屋の扉が開きました。現れたのは宮崎監督の顔でした。 バルコニーは彼の散歩コースだったの