新開発した電子顕微鏡で捉えた、常温状態のヘマタイト結晶の磁場。色は磁場の方向を表す。1層ごとに磁場の向きが互い違いになっていることが分かる(柴田直哉・東京大教授提供)東京大や日本電子などの研究チームが、独自開発した電子顕微鏡で原子1個の磁場を直接観察することに世界で初めて成功した。9日付の英科学誌「ネイチャー」に論文が掲載された。原理的に電子顕微鏡では磁性を持つ対象を観察できないという長年の課題を解決し、顕微鏡研究の歴史に新たな1ページを加える成果だ。電気自動車(EV)のモーターや半導体デバイスなどに使われる磁性材料の高性能化に貢献すると期待される。 強い磁場がレンズにEVの電気モーターに使われる磁石や、磁気メモリなど次世代の半導体技術には、磁性を持った材料が使われている。省エネルギーの自動車や情報技術の実現に向け、高性能な磁性材料の開発は喫緊(きっきん)の課題となっている。