反体制派を指導するIAEA前事務局長が、デモに加わるため死の危険を冒して帰国。その思いの丈── モハメド・エルバラダイ(国際原子力機関[IAEA]前事務局長) エジプトで2カ月前に行われた人民議会選挙はまったくの八百長だった。ホスニ・ムバラク大統領率いる与党が圧勝し、野党が獲得した議席はたった3%だけ。信じられないことだ。 この結果に「失望した」とアメリカ政府は述べた。正直言って、私はアメリカが「失望した」としか言えなかったことに失望した。エジプト国民の気持ちを言えば、とても失望どころではなかった。 チュニジアで起きた「ジャスミン革命」に続いてエジプトで反政府デモが拡大するなか、ヒラリー・クリントン米国務長官はエジプト政府は「安定していて」「エジプト国民の正当な要望と関心に応える方法を探している」と語った。これを聞いて私はびっくりしたし、困惑した。彼女は、何をもって「安定している」
巨額の財政赤字や超低金利もほとんど役に立たなかったのはデフレのせい、という常識は間違っている。 ロバート・サミュエルソン(本誌経済担当コラムニスト) 今では思い出すのも困難だが、日本は80年代、世界で最も尊敬される経済大国だった。日本人の生活水準はいずれ世界一のレベルに達し、技術革新でも世界をリードしていくだろうと誰もが思った。 だがいま聞こえてくるのは、経済成長が止まった「失われた10年」の二の舞いになるなという警告ばかり。日本の主な過ちは「景気刺激策」を小出しにし、デフレを招いたこと。消費者は将来は価格が下がるという期待から、買い物を控えるようになってしまった──今や一般常識と化した説明だが、これは誤っている。 日本経済の没落が示しているのは、景気刺激策の効果には限界があるということ。デフレの悪影響も、少なくとも穏やかな物価下落に関する限り、誇張され過ぎている。景気浮揚のために
瀧口範子(フリージャーナリスト) アップルCEO、スティーブ・ジョブズが再びのメディカル・リーブ(療養休暇)に入ったニュースは、やはりアップルのこれからを懸念する議論を引き起こしている。 ジョブズの療養休暇は、2004年以来3回めだ。最初は、膵臓ガンの手術。一時は回復したかに見えたが、その数年後ますます痩せていくジョブズの姿に、人々の疑問が高まった。本人はホルモンのアンバランスで栄養が吸収できないとしていたが、その後2009年に突然療養休暇入りに。 その時は、体調はもっと複雑になっていたと本人が語ったが、後になって実は肝臓移植を受けていたことがわかった。ジョブズが患っていたタイプの膵臓ガンは完全に摘出されなかった場合、肝臓に転移する可能性が高いという。 そして今回の発表だ。否が応にも再発したのかという疑いが持たれるのだがアップル側は、ジョブズが「健康回復に専念する」と社員に送った6
酒井啓子(東京外国語大学大学院教授) チュニジアの政変には、驚いた。 中東に長期独裁を問題視する声は多かれど、その崩壊劇がチュニジアで起きるとは、予想していた者は多くはなかったに違いない。 報道では、フェースブックを始めとするメディアの役割に、今回の政変の意外性を見る分析が多い。だが、ネットが民衆運動に劇的な役割を果たしたのは今回が初めてではない。一昨年の六月、イランで大統領選挙の後、従来になく大規模な反政府デモが展開されたが、そこに集まった人々はツイッターやショートメールで情報交換した。2008年年末のイスラエルによるガザ攻撃の際、砲撃に晒されて家を出られないパレスチナ人がブログで伝えた「実況」は、世界を駆け巡った。 中東は、近年ネットユーザー数の急増が、世界でも顕著な地域である。いまや国民の三人に一人はネットユーザーで、その数は十年前に比べて30倍以上に増えた。特にイランやシリ
5億人の会員が自発的に毎日更新してくれる国勢調査みたいなものだから研究には最適。ただし人権侵害と紙一重── マイケル・アガー 世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、フェースブックはまさに個人情報の宝庫。同社のサイトで公表されている統計によれば、利用者は5億人以上。ユーザー1人当たり平均で月90回ページを更新しているという。 私は以前に、iPhone搭載のカメラを使うようになって、日々の生活を簡単に記録できるようになったと書いた。今ではさらに多くの人々が、フェースブックを更新する度に、自分の思考を半永久的に記録している。 好きなテレビ番組や身の回りの出来事、読んだ記事、家族の写真、バーチャル農場ゲーム「ファームビル」の成績、結婚式の案内まで、膨大な量の情報がフェースブック上に残されている。私は、こうした記録を誰が見ているのか、そして、そこにどんな大きなトレンドが
文章力抜群でセックスも奔放?──ガセも含めた「ダダ漏れ」個人情報であなたが評価される日 ジェシカ・ベネット あなたが企業の採用担当者で、私が応募者だとしよう。インターネットで個人情報を収集する業者に、あなたが私についての調査を依頼する。すると、こんなことが分かる──。 ジェシカ・ローズ・ベネット、29歳。週に30時間、勤務時間中にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にアクセスしている。大酒飲みで、ドラッグ使用者。セックスの面ではかなり奔放。文章力は抜群で、給料は格安で済む。 正しい情報は一部だけだ。上質なバーボンは好きだが、ドラッグなんて使っていない。この情報は、取材でカリフォルニアのマリフアナ栽培場を訪れたことが原因で入り込んだガセだ。 セックスに奔放? 事実ではないと、私の5年来のボーイフレンドが証言してくれるはずだ。ただ、ポリアモリー(複数の相手と同時に交際する
病気療養で一線を退く伝説のCEOにはもう、やり残した仕事はない── ファーハッド・マンジョー スティーブ・ジョブズが病気療養に専念するために休職する──。1月17日の朝、この発表を聞いて、私はジョブズがアップルに復帰することはないだろうと感じている。といっても、彼の健康状態について内部情報を入手したわけではない。長年アップルを観察してきた経験に基づく推測だ。 1996年にアップルに舞い戻って以来、ジョブズは「コンピュータをテレビやトースターと同じくらい使いやすく、どこにでもある道具にする」という長年の夢を叶えるために会社を引っ張ってきた。彼は見事なまでに成功を積み重ねてきた。そしておそらく、すでに目標を達成してしまった。 テクノロジーの世界はジョブズが語ってきた理想にかなり近づいており、アップルは世界有数のトップ企業に成長した。ジョブズにはもう、やり残した仕事などないのではないか。
大手ベンチャーキャピタルに認められなくても、先輩起業家が資金と助言をくれるタイプの投資が増殖中 ドリー・シャフリル ニューヨークのシリコンアレーにある立派なオフィスで、クリス・ディクソンは18歳の青年に金を受け取らせようとしている。カリフォルニア州からやって来た青年で、噂ではシリコンバレーで最も注目される起業家の一人になりそうだ。青年の名はダン・グロス。音楽、銀行の取引明細やツイッターのフィードなど、個人が「クラウド」に保存したすべてのデータを簡単に検索できる方法を開発した。 この検索エンジン「グレプリン」を事業として軌道に乗せるには資金が必要だ。投資会社ファウンダー・コレクティブの共同経営者である38歳のディクソンは、小切手を用意している。 かっちりした黒縁眼鏡、ジーンズにスタッズベルト、そしてもちろんスニーカー。ディクソンは生き残りの難しい新興インターネット業界では珍しい成功者
8日にアリゾナで起きた乱射事件は、益々政治的な意味合いを持ちながら連日トップニュースとして報じられています。まず、頭部に銃創を負ったギフォーズ議員ですが、「問いかけに反応したり、自発呼吸も見られる」など現時点では一命を取りとめており、今後の回復にも希望が伝えられています。医師団の発表によれば「後頭部から侵入した銃弾が左脳エリア内を貫通した」ために脳幹の損傷がないことなど、多くの奇跡が重なっているのだそうです。この医師団もTVでは英雄になっていますし、また詳細な容態が発表されることで世論が狙撃犯と背後にある「過激な右派思想」への不快感を強めているように思います。 10日には犠牲者を追悼し、頭部を撃たれたギフォーズ議員以下の重傷者の回復を祈る黙祷が国家の行事として行われたのですが、ホワイトハウスの前庭にオバマ夫妻が静かに歩み出て、鐘の音とともに黙祷を主導した儀式が全国中継されると共に、全国で
英エコノミスト誌が警告した「人類の自発的絶滅」は杞憂だった、日本を除いては── ダニエル・ドレズナー(米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院教授) 英経済誌エコノミストが「自発的な人類絶滅」に関する刺激的なエッセイを掲載したのは、1998年末のこと。「問題は(人類が)滅亡するかどうかではなく、それがいつ起きるかだ」という警告は衝撃的だった。 世界の大半の国はこんな警告を受け流した。だが、日本政府だけは密かにこの運命を恐れているのではないか。私は1年半ほど前に移民の受け入れを拒む日本の実態について書いたことがあるが、ニューヨーク・タイムズ紙も1月2日、高い技能をもつ外国人さえ受け入れようとしない現状を報じている。一言で言って、状況は1年半前と変わっていない。 「──高齢化に伴い、労働人口の減少が差し迫っているにもかかわらず、日本は移民に門戸を開こうとしていない。政府の政策は正反対で、
原因も治療法も分からない慢性疲労症候群を解明するウイルス研究 クロディア・カルブ(医療担当) ローラ・ヒレンブランドが数年前に自らのつらい体験をつづった文章は、いま読んでも身につまされる。ヒレンブランドは『シービスケット あるアメリカ競走馬の伝説』と、第二次大戦の爆撃手ルイス・ザンペリーニを描いた新刊『不屈』の著者。しかし同時に、慢性疲労症候群(CFS)の患者を代表する最も雄弁な語り手でもある。現在43歳の彼女は、大学時代からこの不可解な病に苦しんできた。 03年にニューヨーカー誌に寄せたエッセーで、ヒレンブランドは関節の痛み、リンパ節の腫れ、吐き気、疲労感について書いた。むなしく医者を転々とした日々。無関心、恥辱、軽減しない症状。意識がもうろうとして、単語は意味を失い、思考は消えた。「世界が遠く感じられた」と、ヒレンブランドは書いている。「透明なビニールにくるまれているかのようだっ
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