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ブックマーク / knakayam.exblog.jp (32)

  • 不当拘禁の問題 | 中山研一の刑法学ブログ

    小野清一郎博士の戦前の古い時期の研究業績の中に、「不当拘禁の問題」という論稿があることを発見しました(法律時報2巻11号、昭和5年)。「日法理」に至る過程の中にあっても、いまだリベラルな時代状況下では、東京帝国大学の教授が当時の刑事司法手続、とくに警察権の濫用をきびしく戒めた論稿が存在していたことを改めて想起しておく必要があるでしょう。 この論文で、小野博士は、近時(昭和5年当時)労働運動ないし共産主義運動に関連する検挙において警察権が濫用され、不当拘禁、さては××(伏字)に近い暴行・陵虐の風評を聞くことは憤懣に堪えないところであるといわれ、警察署長による「違警罪即決例」と行政執行法による(公安を害する虞ある者に対する)「検束処分」の濫用をきびしく批判された後、とくに以下の3点を指摘されていました。 第1は、捜査機関が行う「取調べ」に関してですが、被疑者がその取調べに任意に出頭し、任意に

    不当拘禁の問題 | 中山研一の刑法学ブログ
  • 民主党のマニフェスト(法務関係)(4)(完) | 中山研一の刑法学ブログ

    4、「終身刑」の検討を含む刑罰の見直し これは、現在の刑罰制度の見直しに関する問題で、無期刑と死刑との中間に「終身刑」を作るという問題とともに、「死刑」制度の問題も含まれていますので、重要な意味をもっています。マニフェストには、以下のような指摘があります。 「死刑存廃の国民的議論を行うとともに、終身刑を検討し、仮釈放制度の客観化・透明化をはかります。死刑制度については、死刑存置国が先進国中では日と米国のみであり、EUの加盟条件に死刑廃止があがっているなどの国際的な動向にも注視しながら死刑の存廃問題だけでなく当面の執行停止や死刑の告知、執行方法などを含めて国会内外で幅広く議論を継続していきます。公訴時効のあり方については、法定刑に死刑が含まれる重要事案のうち特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度を検討します」。 この項目については、文章も短く、方

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  • 民主党のマニフェスト(法務関係)(3) | 中山研一の刑法学ブログ

    3.共謀罪を導入せずに国連組織犯罪条約を批准 この問題は、いわゆる「共謀罪法案」の成否をめぐって長年争われてきたものですが、政権交代によって、民主党のマニフェストが実現される最初の例となる可能性のある問題として注目すべきものです。以下は、マニフェストの内容です。 「共謀罪を導入することなく国連組織犯罪防止条約の批准手続きを進めます。(自民党)政府は、国連組織犯罪防止条約を批准するための国内法整備として、共謀罪を新設する法案を繰り返し国会に提出してきましたが、民主党は、共謀罪に反対する国民の広範な世論と連携して法案の成立を阻んできました。共謀罪は、団体の活動として犯罪の遂行を共謀した者を処罰するものですが、犯罪の実行の着手、準備行為がなくても相談しただけで犯罪となること、およそ国際性とは無縁な犯罪や重大犯罪とまではいえないようなものを含め619もの犯罪が対象となることなど、わが国の刑法体系を

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    nornsaffectio
    nornsaffectio 2009/10/09
    そういえば僕が東大系の刑法学嫌いなのって共謀共同正犯をあっさり認めるからだったな。
  • 民主党のマニフェスト(法務関係)(2) | 中山研一の刑法学ブログ

    2.取り調べの可視化、証拠開示徹底による冤罪防止 これは、現在の犯罪捜査における被疑者・被告人の取調べ方法に対する民主党のかつてからの改革案を提示したもので、すでに参議院には法案まで提出していたという経緯があります。以下は、マニフェストの内容です。 「警察、検察等での被疑者取り調べの全過程についてビデオ録画等による可視化を図り、公正で透明性の高い刑事司法への改革を行います。最近、富山氷見事件や志布志事件、足利事件などの冤罪事件が相次いで明らかになりましたが、最大の問題は密室での取り調べです。取り調べでの自白の強要による冤罪を防止するため、①裁判で自白の任意性について争いになった際に検証できるよう、取り調べの全過程を録音・録画することを捜査当局に義務づける、②刑事裁判での証拠開示の徹底を図るため、検察官手持ちの証拠の一覧表の作成・開示を義務付ける――等を内容とする刑事訴訟法改正を実現します」

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  • 民主党のマニフェスト(法務関係)(1) | 中山研一の刑法学ブログ

    先の総選挙で政権交代を果した民主党は、すでに各分野でマニフェストに公約した改革に着手しています。困難や限界も予測されますが、これまでにない改革の意欲を感じさせるものがあることは事実です。そこで、改めて「法務」関係の分野で民主党が掲げた政策の主要なものを確認した上で、それがどこまで実現されるかを見守り、可能な限り応援したいと思います。 1.法曹養成制度の検証と司法制度改革の推進 このテーマについては、以下のような政策が提示されています。 「法曹人口の大幅な増加という観点から年間の司法試験合格者を3000人とする目標が立てられ、また法曹の質の向上のため2004年から法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度が導入されました。しかし、法学未修コース出身者の新司法試験合格率の低迷、修習終了時の考試(二回試験)の落第者の急増、弁護士志望者の就職難等の問題が指摘されるようになりました。法曹の質を維持しつ

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  • 裁判員法第1号事件 | 中山研一の刑法学ブログ

    新しい裁判員法の実施第1号事件の審理が、8月3日から8月6日までの4日間の連続開廷で早期に終結しました。テレビや新聞は、その経過と内容を連日にわたって詳しく報道しましたが、それは、裁判員の選出手続から始まって、第1回公判からの審理の進行状況、そして最終的には、判決の内容を伝えるとともに、裁判員の感想や、担当した検察官や弁護士、さらにはいわゆる有識者の談話にも及んでいます。そして、一般には、まずは無難な門出(好発進)として評価されているといってよいでしょう。 この第1号事件は、いわゆる「否認事件」ではないので、最初から有罪が予測されており、「量刑」(どの程度の刑罰を科すのか)に関する裁判員の対応が問われるというケースでしたから、それほど問題があるとは思われなかったのですが、しかし細かく見ますと、このような単純と思われる事件の審理においても、すでにいくつかの問題があり、今後の課題をかかえている

    裁判員法第1号事件 | 中山研一の刑法学ブログ
    nornsaffectio
    nornsaffectio 2009/08/08
    実に簡素な寸評だが、いろんな意味でまあそんなところかと。|本当はもっと若い刑事法学者のこういう記事を読みたいんだけどね…。
  • 世論調査の見方 | 中山研一の刑法学ブログ

    内閣府が5月実施の裁判員制度施行後に行った世論調査について、7月26日(日)の新聞がその内容を報じましたが、その評価の仕方に微妙な異同があることに気づきました。 まず、朝日新聞によりますと、「裁判員『応じる』72% 若い人ほど意欲 裁判員に呼び出されたら応じる人は7割。若い世代ほど応じる割合は高くなり、年代が上るほど消極的になる傾向が浮かび上がった。『義務だから、なるべく行く』が58%、『義務かどうかに関係なく行く』は14%と、応じる意向を示した人は計72%だった。一方、『義務でも行くつもりはない』と答えたのは26%で、ほぼ4人に1人。年代が上るほどその傾向は強まる。『有罪・無罪の判断が難しそう』、『自分の判断が被告の運命に影響するので荷が重い』といった理由が多い」。 これに対して、東京新聞によりますと、「裁判員候補者25%『行かない』 裁判員候補者として呼ばれた場合、『義務だとしても行く

    世論調査の見方 | 中山研一の刑法学ブログ
    nornsaffectio
    nornsaffectio 2009/07/28
    裁判員制度に関する世論調査について、朝日新聞と東京新聞の見方が分かれる。
  • 関西民科の60年 | 中山研一の刑法学ブログ

    関西の「民主主義科学者協会」の創立60周年を記念する小冊子が送られてきました。はしがきによりますと、民主主義科学者協会が設立されたのは1946年(昭和21年)で、まもなく「法律部会」が創設され、関西民科もそのころ設立されたものと思われます。ともあれ、それは、戦後初期の民主主義的な法学の創設時にさかのぼるもので、私自身の研究生活の出発点にもかかわる歴史的な時代状況を反映しています。 ただし、1946年には私自身はまだ旧制高校在学中で、1948年に京大法学部に入学した後、在学中に関西民科の活動にかかわっておられた先生方や先輩の大學院生の方々にお目にかかる機会を持つ程度の関わりがあったに過ぎません。格的な関係が出来たのは、1953年に学部を卒業して大學院の研究奨学生に採用されてから以降のことですが、皮肉なことに、その頃にはすでに占領政策の転換によって、戦後の民主主義法学自体が変質と転換を迫られ

    関西民科の60年 | 中山研一の刑法学ブログ
    nornsaffectio
    nornsaffectio 2009/07/10
    「民科の会員」というのはある意味レッテルだが、現在でも活動中の法律部会からイデオロギーの壁を超えて無視できない研究成果を出してくる学者がちゃんと出るあたり、事はそう単純ではないことを実感させてくれる。
  • 戦後の民主化の限界 | 中山研一の刑法学ブログ

    1945年の太平洋戦争の敗戦が、戦前から戦後への日社会の「民主化」にとって、決定的な転換点であったことは、動かし難い歴史的事実です。当時は「民主革命」とさえ言われたのです。私自身は、清水高等商船学校(海軍の兵籍)の2年生で敗戦を迎え、戦後は旧制の静岡高校に在学し、文字通り、自由と平和の世界を満喫しました。 日国憲法が新しく制定され、刑事訴訟法が英米法の当事者主義と適正手続原則に沿って全面改正され、刑法も不敬罪やスパイ罪などを廃止するなどの改正があったほか、猛威をふるった治安維持法も特高警察も全面的に廃止されたのです。 それは、国政の「民主化」の最大のチャンスだったのですが、アメリカ占領軍総司令部による上からの改革であったため、戦後の民主化の担い手が育たないまま、わずか3-4年で反動に転ずることになりました。代用監獄での密室取調べの廃止も、死刑の廃止も、陪審制の復活も、そのチャンスを失っ

    戦後の民主化の限界 | 中山研一の刑法学ブログ
    nornsaffectio
    nornsaffectio 2009/07/03
    戦前/戦後の二項対立がヴェールのように覆い隠している事実。
  • 『世界』4月号 | 中山研一の刑法学ブログ

    雑誌「世界」の2009年4月号が出来て、岩波書店から2部送られてきました。その、特集「人を裁くとは?―裁判員制度実施を前に考える」の中には、報告やルポのほかに、拙稿を含む4つの論文が掲載されていますが、とくに、木谷明氏(東京地裁判事、最高裁調査官、東京高裁刑事部総括判事などを歴任、現在は法政大学大學院法務研究科教授)による「どこを改善すべきか」という論文(談)の中に注目すべき次のような重要な指摘が含まれています。 1.「疑わしきは被告人の利益に」とは、「常識に照らして犯人だと思われればよい」という程度の説明では不十分で、「証拠に照らしてまず間違いない」といえる場合でなければならない。 2.最大の問題は、被疑者に対する密室での取調べ状況をそのままにしていることで、一部ではなく、取調べの「全面的な可視化」と、証拠の「全面的な開示」が必要である。 3.公判前整理手続で予定した以外の審理が事実上で

    『世界』4月号 | 中山研一の刑法学ブログ
    nornsaffectio
    nornsaffectio 2009/03/09
    こういう人も裁判所にいたということを銘記しておきたい。「木谷調査官」として講学上も名高い人。
  • 韓国の国民参与法(1) | 中山研一の刑法学ブログ

    近着の法律雑誌(刑事法ジャーナル15号、2009年)の中に、「韓国における国民参与裁判の現状」と題する論文が掲載されていました。これは、お隣の韓国の国民参与法について、制度の特色の紹介とともに、発足1年間の実施状況についても言及されており、それが現職の裁判官の手になるものである点でも注目を惹きました。ここではその内容を紹介しておきます。 まず、制度的な面では、韓国の参与法には、わが国の裁判員法と違う点がいくつかあります。第1は、参与法が裁判の現状に対する不信感から国民が強く要望したこと、したがって陪審員への参加がより積極的であること、第2は、法の趣旨が司法の民主的正当性と国民の信頼を高めることを目的とするとして、「司法の民主化」の理念がうたわれていること、第3は、国民参与裁判が「選択制」になっており、被告人は従来の裁判も選ぶことができること、第4は、事前に行われる「公判準備手続」も公開さ

    韓国の国民参与法(1) | 中山研一の刑法学ブログ
    nornsaffectio
    nornsaffectio 2009/02/07
    韓国の国民参与法に参照して、わが国の裁判員法の是非を問う。
  • 仕事を作る | 中山研一の刑法学ブログ

    大學で講義をしなくなって、もう10年以上になりますが、研究の仕事の方には定年がなく、何とかまだ続けています。習い性になるというのでしょうか、何時までという終わりがなく、おそらく死ぬまでということになってしまうでしょう。 ただし、自然と研究の範囲も内容も限定されたものとなり、無理をすれば恥をさらし、自分も傷つくことになりかねません。自然体の程よい自制心によって、興味と刺激を長持ちさせることができればと心がけています。 研究のスタイルは人さまざまですが、私の場合は、テーマが決まれば、まずそのテーマに関連する文献や資料の収集に努力します。そして、これらを分類して、できるだけ丹念に読み、それを後で復元できるように準備します。文献は、赤線と付箋だらけとなります。それによって、現在の問題状況を把握することができれば、一応準備は完了です。 次は、論文の執筆の開始ですが、無計画は禁物で、できるだけしっかり

    仕事を作る | 中山研一の刑法学ブログ
    nornsaffectio
    nornsaffectio 2009/02/03
    やはり学問は当たり前のことを当たり前にきっちりやるのが王道なのだなあと。
  • 梵語との出会い | 中山研一の刑法学ブログ

    1月19日には、もう一つ収穫がありました。それは、古代インドの文語である「サンスクリット」との出会いです。19日の若狭での会合の際に、参会者の中から質問が2つ出ましたが、その一つが、梵語にかかわるのではないかというものでした。 それは、若狭の山中の古い土葬場のコンクリートの端に、不思議な文字が書いてあるのが見えるので、これを日語に直すと、「オンアメリタ アメリト アメリタ」と読めるというのです。その意味を専門家に聞いてほしいというわけです。 私には判りませんが、幸い、このマンションの入居者の中に、高齢の方で印度哲学の専門家がおられるらしいと聞き、その方を訪問して、率直に質問してみました。この方は、94歳のご高齢の雲井昭善という著名な先生で、大谷大学名誉教授で文学博士、まさに仏教哲学の権威者です。先生は、さっそく梵語を書かれましたが、これをローマ字で書くとすれば「Om Amrta」(上下に

    梵語との出会い | 中山研一の刑法学ブログ
    nornsaffectio
    nornsaffectio 2009/01/22
    82歳の刑法学者、94歳の印哲学者に訊く。
  • 中山研一の刑法学ブログ : 漱石の当て字

  • 瀧川ゼミ生の会(4回目) | 中山研一の刑法学ブログ

    昨年12月の第2日曜日に集まって以来、今年も第2日曜日の12月14日に、瀧川ゼミ生 の会を開きました。今回は、びわ湖畔の私の入居している高齢者マンションに集まって頂くよう、13名のゼミ生に案内状を出したのですが、欠席者が多く、結局集まったのは3名という淋しい状態でした。 しかし、今回は、瀧川先生の次女に当たられる熊谷栄子様の2人の娘さんご姉妹が出席を快諾され、そろって参加して下さいましたので、総勢5人となり、われわれゼミ生の知らなかった瀧川先生をめぐる逸話や裏話を聞かせてもらうことができて、大変興味深く、時の経つのを忘れて、若かりし頃の思い出話に打ち興ずることができました。 話題のなかでは、瀧川先生がドイツから立派なピアノを持って帰られ、それが京大で音楽会があるときは使われていたこと、しかし瀧川先生ご自身は実は音痴で音楽は不得意であったこと、先生の勉強部屋には入れてもらえず、奥様が原稿の清

    瀧川ゼミ生の会(4回目) | 中山研一の刑法学ブログ
    nornsaffectio
    nornsaffectio 2008/12/16
    瀧川幸辰のゼミ生か…、そりゃご高齢だろうな…。
  • 著書の改訂 | 中山研一の刑法学ブログ

    私は、現役時代に多くの著書を公刊しましたが、その多くは、いわゆる「古」となって、歴史的な存在となり、専門分野の関係文献として引用される程度のものとなっています。ところが、まだ現在まで生き延びているものがあり、それらの著書については、出版後の変化を現在の状況に合わせるために、「改訂」作業を続けて行くことが必要となります。 刑法の体系書は大学の講義のためのテキストとして、比較的寿命の長いものですが、そのなかでも、『口述刑法総論・各論』(新版、2003年、2004年、成文堂)は、不思議に今でもかなりの需要が続いていますので、補訂版(2005年)に続いて、補訂2版(2006年、2007年)まで発行しました。これらの改訂は、刑法の一部改正や重要判例の追加などを目的としたものですが、毎年今頃になると、来年4月に向けて、さらに補正が必要かどうか、検討しておかねばなりません。その作業が毎年12月の課題と

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    nornsaffectio
    nornsaffectio 2008/12/02
    仕方ないとはいえ残念>「体系書である『刑法総論・各論』(1982年、1984年、成文堂)についても、全面改訂の要望があるのですが、これにはもう対応しきれない状態です。」
  • 裁判員は行司なのか | 中山研一の刑法学ブログ

    日弁連の宮崎誠会長は、京大法学部42年の卒業生で、最近の京大学生新聞(614号、2008年10月20日)から取材を受け、今回の裁判員制度は刑事裁判に市民感覚を生かすものなので、これを円滑に定着させていくことが重要だとされています。この記事を読んで気になったのは、次の2点です。 ○ 第1は、今回の改革のきっかけになったのは、これまでの司法界が多くの欠点を抱えており、その欠陥がだんだん増幅されてきたことにあるとし、冤罪事件や強引な取調べに対する批判が今回の裁判員制度の最大の要因であるとされている点です。警察や検察庁、そして最高裁も裁判員制度の導入を嫌がりましたが、決め手はいつまでも欠点が是正されないことにあり、今回の改革が弁護士の運動の積み重ねの結果だといわれるのです。しかし、実際には、司法制度改革審議会の意見書には、司法の民主化や冤罪防止の目的はほとんど触れられず、冤罪を生み出す捜査の改革は

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  • 動き出す裁判員制度 | 中山研一の刑法学ブログ

    このところ、裁判員制度の問題に繰り返し触れてきましたが、標題のような朝日新聞の特集記事(10月17日)には、肝心のところに不正確な記述や評価があることが気がかりで、その影響力の大きさからも、このまま見過ごすことはできないと考え、2,3の点を指摘しておきます。 第1に、裁判員制度の導入の経緯についての記述は客観的に叙述されていて、問題がないように見えますが、これまでと違って、「事前に証拠や争点を絞り込み、連日のように公判を開いて一気に判決を出すという新しい形の刑事裁判になりそうだ」という予測はともかくとしましても、それに続く「捜査当局の取調べに、容疑者が自分の意思で自白したのかを確認するために、取調べの一部の録音・録画も始まっている」という記述には、問題があります。それは、現在の密室での取調べの改革には取調べの「全部」の録音・録画が必要であるのに、なぜ取調べ当局が「全面開示」に頑強に拒否して

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  • 陪審制消極論 | 中山研一の刑法学ブログ

    一方、陪審制の導入に消極的な意見もありますが、陪審制よりも「参審制」の方が現実的であるという意見のほかに、国民の司法参加自体に疑問を呈する根強い反対論も存在することに注意しなければなりません。 その一つとして、ここでは、西野喜一氏の『裁判員制度の正体』(講談社現代文庫、2007年)をあげておきます。著者は元裁判官ですが、裁判はプロの裁判官に任せるのが筋であり、市民参加は弊害あって一理なしと明言されているのです。 著者によれば、今回の裁判員制度は、これを実施しなければならない必然性のない無用な制度であること、日国憲法に反する違法な制度であること、手抜き審理が横行する可能性があること、事案の真相の追求が図られなくなるおそれのある不安な制度であること、被告人にも犯罪被害者にも辛い思いをさせる苛酷な制度であること、費用がかかり過ぎる浪費の制度であること、裁判員に動員される国民の負担があまりにも大

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  • 沖縄の陪審制度 | 中山研一の刑法学ブログ

    沖縄が日に復帰する前のアメリカ統治下の時代には、約10年間にわたって「陪審制度」が実施されていたことがあります(1963年ー1972年)。日弁護士会が行った調査報告を参照することができましたので(太田・鳥毛「アメリカ統治下・沖縄の陪審制度」自由と正義43巻10号、1992年、62頁以下)、その中から、いくつかの注目すべき点を紹介しておきます。 1.陪審制導入の契機は、沖縄在住のアメリカ人にも国の陪審裁判を受ける権利を保障するという点にあったとみられますが、沖縄人(日人)が当事者になる事件でも、アメリカ民政府裁判所で審理される際には、陪審制度が適用されていました。 2.陪審員は、琉球列島内の区域から無作為で抽出され、呼出状が送達され、抽選された陪審員候補者に質問がなされ、忌避されずに残った候補者の中から、1件につき12名と予備員が選ばれました。被告人は、陪審を受ける権利を放棄すること

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