2020年初めから中国武漢での流行が知られるようになった新型コロナウイルス感染症に関して、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)保健省は世界保健機関(WHO)に対して4月2日時点で感染者なしと報告し、また、6月9日にロシアのタス通信に対しても、感染者は出ていないと発表している1。そして、平壌に駐在しているロシアのマツェゴラ大使も5月29日にタス通信に対して、朝鮮が「現時点で感染症を免れたほとんど唯一の国」であると述べている2。 ここでは、これまでのところ感染者ゼロを維持することに成功している朝鮮でどのような防疫措置がとられたか、そして、防疫事業を進めている組織がどのようなものかを明らかにしてみたい。 2020年1月9日にWHOが中国武漢で発生している肺炎に関する声明を出し、15日に日本での感染者が確認されると、16日には朝鮮の公式メディアである朝鮮中央テレビは中国での新型コロナウイルスに関し