前回までに「ひきこもり」の当事者たちを悩ませている二つの〈語れなさ〉を指摘しました。一つ目は、自分が直面している困難や苦悩を言語化できないということ。二つ目は、言語化できたとしても、それを率直に語ることが許されない状況があるということ。今回はさらに、語ったことが自分の思いや意図にそぐわないところで勝手に理解されてしまうという、三つ目の〈語れなさ〉を明らかにしたいと思います。 話の通じなさがもたらす不安 今回もある当事者――Bさんとしておきます――へのインタビューに沿って、話を進めていきましょう。前回ご登場いただいたAさんと同じく、Bさんも語彙が豊富で話し上手な方です。ところが、Bさん自身はどうしても自分の話が理解されないことに深く思い悩んでいるようでした。発達心理学の専門書に目を通すなど「言語化する努力」をしているにもかかわらず、なかなか思うような反応を得られずにいたのです。 Bさんはイン