岩波書店『科学』2011年1月号に佐々木先生の文章が載っていました。 特集「<利他>の心と脳・社会・進化」をテーマに12人の研究者が、それぞれの研究分野の立場から「利他」に関して書かれています。 佐々木先生は、仏教学の立場から「利他」の概念を明確に論述されていますが、二つの異なる意味を持つ「利他」の概念規定を通し、上座部仏教と大乗仏教における根底的な違いが非常によく理解できます。 以下、全文引用しました。 仏教における「利他」の二つの概念 佐々木閑 ささき しずか 花園大学教授(インド仏教学) 利他という語はもともとがインド生まれの仏教用語である。 「自利」「利他」という対立する二つの概念があって,自利とは「自己の利益」を意味し,一方の利他は「他者の利益」を意味する。これらの語は,仏教の伝来とともにインドから中国,そして日本へと伝わり一般化した。日本人にとっては慣れ親しんだ言葉である。した