Collingwood, R. G. 1938. The Principles of Art. Oxford University Press. 哲学若手の発表で使う予定が、時間に余裕がなく、結局使わなかった一節。 せっかくなので訳出したものをここに載せておきます。 コリングウッドの情動表出の理論の要点が詰まった一節で、情動表出に関する文献でもそのまま引用されているのをわりと見かけます。 ある人が情動を表出していると言われるとき、彼について言われているのは以下のようなことだ。まず、彼は一つの情動をもっていることを意識しているが、その情動が何であるかは意識していない。彼が意識するすべては動揺や興奮であり、そうしたものが彼の中で進行していることを彼は感じるものの、その本性について無知である。この状態では、彼が己の情動について言えるのは、「私は感じている……私は自分が何を感じているかわからない」