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ブックマーク / lju.hatenablog.com (13)

  • ギャラガー, ザハヴィ “現象学的な心:心の哲学と認知科学入門” - three million cheers.

    現象学的な心: 心の哲学と認知科学入門 作者:ショーン・ギャラガー,ダン・ザハヴィ勁草書房Amazon 書籍紹介やブックフェアでよく見かけていたをようやく読んだ。 現代現象学の観点から「心の哲学」に対して分析哲学とも認知科学とも異なるアプローチで迫る。 これまで分析哲学が「心の哲学」を展開し認知科学の成果へも積極的に関係を結んでいったのに対して、現象学ではこの分野への関心が乏しく、分析哲学と現象学は対話もないまま長く対立・無関心の状態にあった。 だが「心の哲学」が扱うテーマはもともと現象学の研究対象の中心と重なっている。そして1990年代から状況が変化し、現象学と分析哲学の心の哲学との関係に関する研究が現れるようになる。また認知科学も「意識」や認知における身体といったものを取り上げ始め、fMRIなどを用いた実験でも被験者の経験に関する報告が扱われるようになって、認知科学での現象学の役割

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    o_secchan 2023/05/08
  • “すずめの戸締まり” - three million cheers.

    すずめの戸締まり” 監督/脚 : 新海誠 2022 オープニング・タイトルのところがまず良かった。 災いの出てくる「後ろ戸」を閉じて鍵を掛けたところでタイトル画面が出る。 閉めるという行為が映画のオープニングとなって物語を開くというのがおもしろい。 全国を旅して扉を閉めていく物語で、「戸締まり」には災厄を封じ込めるという意味があるのだけれど、では扉を開くこと何もかもが災いに結びつけて描かれているかというとそうではなく、自転車の鍵を開けたり、草太を助けるために常世への扉を開けたり、肯定的な意味合いで描かれているものもある。映画内に出てくる扉や鍵の細かな開け閉めをすべて拾い上げていくとかなりの量になりそうで、たとえば電車のドアやオープンカーのループ開閉、あるいは草太の視点から見た瞳のまばたきなど、観客が必ずしも意識しないだろうものも含めてきちんと考えて描写しているはずだ。 常世への扉は閉じ

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    o_secchan 2022/11/20
  • 中野敏男 “ヴェーバー入門 ──理解社会学の射程” - three million cheers.

    ヴェーバー入門 ――理解社会学の射程 (ちくま新書) 作者:敏男, 中野筑摩書房Amazon ヴェーバーとは何者か、と問われたとき、自分としてはデュルケームとの比較項という位置付けで浮かび上がってくる。「行為をいかに記述するか」という社会学の課題に対し、社会学の創始者と言えるふたり、デュルケームとヴェーバーは異なるアプローチをおこなった。デュルケームは個人を超えた「構造・様式」によって、一方、ヴェーバーは個人の「主観的意味」による説明を試みた。 ──という対照の通り、ヴェーバーはまずもって社会学者であるわけだけど、日ではヴェーバーを多面的に活動した思想家という見方で扱う風潮があり、特に現代社会へ警鐘を鳴らしたというところが取り上げられがち……とこのヴェーバー入門書も語っている。そうした従来のヴェーバー理解と対極的に、行為の記述という社会学の方法に焦点を当ててヴェーバーの学問を見ていこう、

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    o_secchan 2021/07/24
  • エル=モフタール, グラッドストーン “こうしてあなたたちは時間戦争に負ける” - three million cheers.

    “This Is How You Lose the Time War” 2019 Amal El-Mohtar, Max Gladstone ISBN:4153350532 こうしてあなたたちは時間戦争に負ける (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:アマル・エル=モータル,マックス・グラッドストン早川書房Amazon はるかな未来、人類の子孫はふたつの勢力に分かれ、互いの消滅を目指して長い戦争を続けている。 ふたつの勢力〈エージェンシー〉と〈ガーデン〉はどちらも現在の人類から相当に進化した者たちだが、決定的に異なる技術・社会・思考様式を持っている。簡単に言えば〈エージェンシー〉はメカニカル、〈ガーデン〉はオーガニックといったところ。『翠星のガルガンティア』での「コンチネンタル・ユニオン」と「イボルバー」の対立構図ぐらいの相容れなさがある。 しかし彼らには共通点もある。それはどちらも時間跳

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    o_secchan 2021/06/20
  • 三木那由他 “話し手の意味の心理性と公共性” - three million cheers.

    話し手の意味の心理性と公共性: コミュニケーションの哲学へ 作者:那由他, 三木発売日: 2019/12/16メディア: 単行 コミュニケーションにおける「意味」とは何か、という論考。 全体の構成が非常にわかりやすく、明晰な筆致。 ただ、扱うテーマがテーマなだけに、出てくる具体例がことごとく難しい……。解けたように見えた問題にあえて反論を出して精査することの繰り返しなので、具体例が難しくなるのは仕方ないのだが、なかなか理解できずもどかしい。とはいえ論旨は明瞭なので、全体についていくことには支障ない。 「意図」という、言ってみれば底なし沼のような概念を用いず「意味」を説明している。共同体での規範、多層な共同体、多様な発話要素など、動的で広がりのある結論。社会学的な視角という感じを強く受ける。ここでは話し手と聞き手という対で追究されているけれど、対話のなかで話し手と聞き手がどう入れ替わるのか

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    o_secchan 2020/12/31
  • ジョセフ・K.キャンベル “自由意志” - three million cheers.

    現代哲学のキーコンセプト 自由意志 作者:ジョセフ・K.キャンベル発売日: 2019/09/27メディア: 単行 もし「決定論」が真だとするならば、人間に自由意志などあるのだろうか? いや、仮に決定論が偽であり世界は非決定論的にできているのだとしても、運や偶然ですべてが進んでいくのであれば、やはりそこに自由意志の余地はない。 この問題は「自由意志のジレンマ」として、古来より哲学のテーマとなってきた。 なぜ自由意志がジレンマに陥るとまずいかというと、何よりも「道徳的責任」の危機となるから。人が自由意志を持たずすべてが既に決定されている、あるいはすべてが運任せにすぎないのであれば、人は自分の行為に道徳的責任を持つことはないのではないか。そうなると人の社会は立ちゆかなくなってしまう、と。 このは、そのような自由意志をめぐる哲学の諸議論を整理したもの。特に、自由意志のジレンマを導くさまざまな「

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    o_secchan 2020/05/25
  • 酒井啓子編 “途上国における軍・政治権力・市民社会 ─21世紀の「新しい」政軍関係─” - three million cheers.

    途上国における軍・政治権力・市民社会―21世紀の「新しい」政軍関係― (シリーズ転換期の国際政治) 作者:酒井啓子,池田明史,玉田芳史,鈴木恵美,井上あえか,松弘,久保慶一,山尾大,末近浩太,五十嵐誠一,横田貴之,増原綾子,松永泰行,鈴木絢女出版社/メーカー: 晃洋書房発売日: 2016/04/30メディア: 単行 科研費に助成された共同研究「現代中東・アジア諸国の体制維持における軍の役割」の成果として編纂されたで、14人の著者による論文集。 近年、中東や東南アジアなどの発展途上国において、軍が政治の舞台へ再登場する事態が見られる。たとえば2010年の「アラブの春」や、2014年のタイのクーデタなど。 背景には、2001年以降の世界で「国家が物理的暴力装置を独占する」という近代からの原則が崩壊したことがある。国家の一元的管理、軍を管理する政権の統治正当性、国家・国民に起原を持つ物理的

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  • 古田徹也 “それは私がしたことなのか 行為の哲学入門” - three million cheers.

    それは私がしたことなのか: 行為の哲学入門 作者: 古田徹也出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2013/08/05メディア: 単行この商品を含むブログ (7件) を見る この前読んだ『ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考』の著者による2013年の。書店で興味を引かれ読んでみたけど、読み終わるまで同じ著者だと気付かなかった。内容はけっこうおもしろかった。 「〜として理解するためのそもそもの条件」というような考え方が特徴的。こういうものを追求することこそが哲学なのだと思う。 全体としては「言語主義」的なところがある。心身問題で一元論にも二元論にも与さない第三の道を探るというなら、行き着く先はやはり「言語」となるのだろう。 倫理学へ移行する第3章では、「割り切れなさ」というキーワードが印象に残った。 全体構成 第1章 行為の意図をめぐる謎 自由意志とはそもそも何か 「私が手をあげるという事実

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  • 古田徹也 “ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考” - three million cheers.

    ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考 シリーズ世界の思想 (角川選書 1003 シリーズ世界の思想) 作者: 古田徹也出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2019/04/26メディア: 単行この商品を含むブログを見る 概要 ウィトゲンシュタイン前期の思想を示す重要文献『論理哲学論考』の全文詳解。(実際にはいくつか論から離れた個所は省略されているので「全文」ではないが) 『論考』の1節から最後の7節まで順を追って解説している。 『論考』には、全文が番号付の節でできているという特徴がある。 基幹となるのは次の7つの文章。 世界は、成立している事柄の総体である。 成立している事柄、すなわち事実とは、事態の成立のことをいう。 事実の論理像が、思考である。 思考とは、有意味な命題のことである。 命題は、要素命題の真理関数である。(要素命題は、自分自身の真理関数である。) 真理関数の一般形

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    o_secchan 2019/05/27
  • ジョン・サール “社会的世界の制作” - three million cheers.

    “Making the Social World: The Structure of Human Civilization” 2010 John R. Searle ISBN:4326154551 社会的世界の制作: 人間文明の構造 作者: ジョン・R.サール,John R. Searle,三谷武司出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2018/10/04メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る 概要 言語哲学・分析哲学を長く牽引してきたサールが、「社会」を対象として書いた論考。1995年の『社会的現実の構成』に続くもので、社会の制度的事実について考察している。この一連の探求をサールは「社会的存在論」と呼んでいる。 制度的事実というのは、「○○はアメリカ大統領である」「私が手に持っている紙片は20ドル紙幣である」というような、人間の主観的態度によって生み出された事実のこと。

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    o_secchan 2018/11/28
  •  “宇宙よりも遠い場所” - three million cheers.

    南極を目指す女の子4人の物語。 全13話、万遍なく良質。 キマリ/報瀬/日向/結月の4人はそれぞれ個性的でしっかりしたキャラクター造形。4人のリズミカルな掛け合い、役割語に依存しない等身大の台詞が作品の魅力の大半を占めている。 この点、声優の演技力による貢献も非常に大きい。特に報瀬。信念と筋を持ちつつも、人見知りで、抜けてる部分も随所にある、という起伏の激しいキャラをとても良く演じている。 主人公に位置付けられているのはキマリだけど、「南極に行きたい」という強い願望と動機を持つ報瀬がストーリーの全体を牽引し、軸となっている。 居場所が不安定で帰属先がはっきりしない4人が共通の行き先を目指して旅する、というのが基的な構図。 各話どれもよくできていて、すべて見終わって残るのは爽やかで前向きな気持ち。 人物絵が少し独特で、ハイライト描写がとても目立つのが特徴。放映前の止め絵だとすごくはっきり認

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  •  西村清和 “現代アートの哲学” - three million cheers.

    現代アートの哲学 (哲学教科書シリーズ) 作者: 西村清和出版社/メーカー: 産業図書発売日: 1995/10/01メディア: 単行購入: 9人 クリック: 97回この商品を含むブログ (86件) を見る 一冊を通してひとつの論考を展開しているというより、現代美学の主要なテーマを個別に記していくような構成。「アート」を広範に採り上げ、写真、文学、広告とさまざまな対象を美学・芸術哲学の視点で分析する。 基的な構図は、モダン(ハイアートを維持するイロニーとアヴァンギャルド:前衛)からポストモダン(消費社会のシミュレーショニズム、キッチュとポップ:大衆)への移行。特に「寄生」という語がキータームとなっている。 出版は1995年。広告に大きな関心が寄せられているところなどは時代が表れているけれど、アートワールド、虚構文、歴史記述や趣味といったように、現在も活発に論じられているような概念が散りば

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  •  つくみず “少女終末旅行” - three million cheers.

    人類が消え去った世界をふたりの女の子ユーリとチトが旅する話。ウェブ連載中で、いま3巻まで単行が出ている。 一見、どうにも下手な絵に見えるんだけど、いつのまにか目に馴染んで逆に癖になってくる。実はこれ、むしろ相当うまい絵だと思う。(後述) ――結局 補給して移動しての繰り返しか… この旅路が私たちの家ってわけだね 内容としては、この台詞そのままの漫画。 全体の雰囲気は『BLAME!』と『百万畳ラビリンス』を重ね合わせたみたいな感じ。無人の巨大都市とそれを維持する自律機械といった設定なんかは『BLAME!』を思い起こさせるし、ふたりの女の子がボケとツッコミ的に会話しながら旅していくところは『百万畳ラビリンス』に似ている。 作品紹介を最初に読んだときは、主人公ふたりを除いて人類が滅びてしまっている無人の世界をただ彷徨していくだけの漫画なのかと思ってたんだけど、読み進めてみたらそんなにさみしい感

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    o_secchan 2017/10/07
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