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ブックマーク / shorebird.hatenablog.com (124)

  • 書評 「善と悪の生物学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    善と悪の生物学(上) 何がヒトを動かしているのか 作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon善と悪の生物学(下) 何がヒトを動かしているのか 作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon 書は,ストレスについての神経生理と行動の研究者で,アフリカで長年ヒヒの観察をしたことで知られるロバート・サポルスキーによるヒトの行動(特に暴力と攻撃と競争)についての一冊.進化生物学,脳神経科学,心理学の至近要因,究極要因の両方を含む広範な知見が簡潔に紹介され,著者自身の様々な考察が述べられている重厚な一般向け啓蒙書だ.サポルスキーは2001年に自伝的な回想録「A Primate's Memoir: A Neuroscientist's Unconventional Life Among the Baboons」を出しており(邦訳書は「サルなりに思い出すことなど」で2014年刊行)

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    o_secchan 2024/05/03
  • 書評 「技術革新と不平等の1000年史」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    技術革新と不平等の1000年史 上 作者:ダロン アセモグル,サイモン ジョンソン早川書房Amazon技術革新と不平等の1000年史 下 作者:ダロン アセモグル,サイモン ジョンソン早川書房Amazon 書はダロン・アセモグルとサイモン・ジョンソンという2人の経済学者による「技術革新がどのような社会的経済的影響を与えるか」を語る一般向けのになる.議論の焦点はまさに今大きな展開をみせているAI技術が私たちの社会や経済にどのように影響するのか(テックジャイアントが言うような楽観的な予測を信じていよいのか)というところにある. アセモグルはこれまでジェイムズ・ロビンソンと組んで,歴史的な自然実験という視点から国家や社会がどのような道をたどるか(どのような制度のもとで持続的経済成長が可能になるのか)を語る「国家はなぜ衰退するのか」「自由の命運」を書いてきた.書のテーマはこれらの著作より狭い

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    o_secchan 2024/03/14
  • 書評 「心理学を遊撃する」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    心理学を遊撃する 作者:山田祐樹ちとせプレスAmazon 書は認知心理学者山田佑樹による,「心理学の再現性問題」についてそれをリサーチ対象として捉えて突っ込んでいった結果を報告してくれる書物である. 「心理学の再現性問題」は,心理学者にとって自分のリサーチの基礎ががらがらと崩れていくかもしれないような重苦しいテーマであるに違いない.しかし著者はそれを軽やかに取り上げ,様々な角度からつつき,質を見極めようとする.物語としてはその突貫振りが楽しいし,再現性問題が非常に複雑な側面を持ち,かつとても興味深い現象であり,到達点がなお見えない奥深いものであることを教えてくれる.それはまさに最前線からの「遊撃」レポートであり,迫力満点の一冊だ. 第1章 心理学の楽屋話をしよう 第1章では心理学の「楽屋話」が書かれている.まず著者の駆け出しのころの研究(ランダムネスの知覚),面白い効果を実験で示せたと

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    o_secchan 2024/03/03
  • 書評 「人間性の進化的起源」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    人間性の進化的起源 作者:ケヴィン・レイランド,豊川航勁草書房Amazon 書はヒトの知性や認知能力や心のあり方の進化的な起源を「文化進化」を深く考察することにより探索するだ.そしてその中では累積的文化進化,ニッチ構築,遺伝子と文化の共進化にからむ正のフィードバック過程がキーコンセプトになる.著者はケヴィン・レイランド.原題は「Darwin’s Unfinished Symphony: How Culture Made the Human Mind」 書全体は第1部「文化の基礎」で模倣や文化にかかる行動や能力がどのように進化しうるのかをまず整理し,第2部「人間らしさの進化」でヒトを特別にしているものは何か,それはどうして(ヒトだけに)進化したのかを扱うという構成になっている. 第1部 文化の基礎 第1章 ダーウィンの未完成交響曲 冒頭で,ダーウィンは土手を覆い尽くす生物たちの多様性を

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    o_secchan 2023/07/03
  • 書評 「生物学者のための科学哲学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    生物学者のための科学哲学 勁草書房Amazon 書は生物学にかかわる科学哲学の主要トピックについて科学哲学者や科学史家たちが解説したもの.編者は科学哲学者のカンプラーキスと生物学者のウレルで,書名にもあるように想定読者としては生物学者が念頭に置かれている. これまでの生物学の科学哲学の入門書だと「種とは何か」「自然淘汰の単位は何か」「系統樹の推定はどのような営みか」「利他行動の進化とマルチレベル淘汰」「発生システム論」などの個別の各論のトピックが主要テーマになっているものが多いが,書が取り上げるものは必ずしも「生物学の科学哲学」に限らないということで,「説明」「知識」「理論とモデル」「概念」などの基礎ブロック的なテーマが数多く取り上げられていてなかなかハードな内容になっている.原題は「Philosophy of Science for Biologists」. 第1章 なぜ生物学者は科

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    o_secchan 2023/05/28
  • 書評 「招かれた天敵」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    招かれた天敵――生物多様性が生んだ夢と罠 作者:千葉聡みすず書房Amazon 書は進化生物学者千葉聡による天敵を利用した生物的防除の歴史を扱う大作.千葉は「歌うカタツムリ」でカタツムリを題材に淘汰と浮動の進化観をめぐる壮大な進化学説史を語ってくれたが,書では生物的防除の成功と失敗の歴史を滔々と語り,そのストーリーテラーの才能をまたも披露してくれている. 序章にあたる「はじめに」では,「自然」という著しく複雑で多様な系に対して科学の手法であるモデル化で対応することの限界とリスクが指摘され,より良い解決を望むなら歴史を知ることが有益ではないかと示唆されている.書は有害生物防除についての歴史を知るために書かれているのだ. 第1章 救世主と悪魔 冒頭はレイチェル・カーソンの「沈黙の春」から始まる. 1939年に殺虫効果が発見されたDDTは人体への危険がほとんどないと認識され,マラリア撲滅の切

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    o_secchan 2023/04/06
  • 書評 「不倫」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    不倫―実証分析が示す全貌 (中公新書) 作者:五十嵐彰,迫田さやか中央公論新社Amazon 書はデータを元にした日不倫事情についての解説書だ.著者は社会学者の五十嵐彰と経済学者の迫田さやか.この2人は必ずしも不倫の専門家というわけではないが(五十嵐は移民政策について,迫田は所得格差についての研究をしてきたとある),社会学のさまざまな面から不倫について解説してくれている.不倫は進化心理学的にも興味が持たれるトピックだが,定量的なデータは(特に日についてのもの)はあまり目にすることがなく,基礎的な情報源として読んでみたものだ. 第1章 不倫とは何か 第1章では不倫について概説される.法的な扱い,言語面からの分析,社会科学的位置づけがまとめられている.(以降の小見出しは私が適当につけているものになる) 法的な扱い 日の民法に「不倫」の定義はないが,民法707条には離婚理由の1つとして「

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  • 書評 「暴力と紛争の“集団心理”」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    暴力と紛争の“集団心理” 作者:縄田健悟ちとせプレスAmazon 書は社会心理学者縄田健悟によるヒトの暴力についての社会心理学的知見,特に集団モードで生じる暴力についての知見を丁寧にまとめたになる.私としてはヒトの暴力についての進化心理学的な取り組み(そのような行動傾向はどのように進化したのか,どのような適応的機能があるのか,あるいはないのか)についてはいろいろ読んできたものの,社会心理学的な取り組み(そのような行動はどのような状況で生じるのか)についてはその時々に断片的な知識を読んできただけであり,一度きちんとまとめて読もうと思って手に取った一冊になる. 序章 暴力と紛争の“集団心理” 書ではヒトの性としての「集団心理」を取り扱う旨が最初に宣言される.ここでは進化心理的な側面も含めて「集団心理」について整理されている.また社会心理学は基的に「ヒトの行動は状況次第だ」と考える学問

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  • 書評 「哺乳類前史」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    哺乳類前史: 起源と進化をめぐる語られざる物語 作者:エルサ・パンチローリ青土社Amazon 書は古生物学者エルサ・パンチローリによる哺乳類の祖先たちを語るだ.哺乳類については恐竜絶滅後の大放散の物語が有名だが,それ以前の古生代,中生代の祖先たち(単弓類,盤竜類,獣弓類,キノドン類)の歴史は同時代の恐竜の物語に比べて一般的にはそれほど知られていない.彼等は時に様々なニッチに進出して栄え,時に衰退する歴史を刻んでいる.著者は発掘物語などを横軸に絡めながらこの大いなる歴史を語ってくれている.原題は「Beasts Before Us: The Untold Story of Mammal Origins and Evolution」. 序章 序章では,化石が過去の進化のパターンや絶滅した動物の様々な特徴を教えてくれること,古生物学がビッグデータ解析とCTスキャンにより大きく変容していることが

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    o_secchan 2023/01/23
  • 書評 「「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた 「ネコの空中立ち直り反射」という驚くべき謎に迫る 作者:グレゴリー・J・グバーダイヤモンド社Amazon 書は物理学者であるグレゴリー・グバーが「ネコひねり問題」について語ったになる.「ネコひねり問題」というのは,「ネコは逆さ向けにして落とされても空中でうまく身体をひねって脚から着地するが,物理学的に考えてみて,なぜ,どのようにしてそのようなことができるのか」という問題だ.書店でこのを見かけて最初に感じたのは,ネコは頭からひねってその後身体全体の向きを変えることができるが,それだけの問題をどうやったら一冊のにまで膨らませることができるのだろうかということだ.そしてそれに興味を引かれて購入して読んでみたものだが,この「ネコひねり問題」には何重にも絡まる謎があって,どうしてなかなか奥深く面白い.原題は「Falling Felin

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  • 訳書情報 「親切の人類史」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか 作者:マイケル・E・マカローみすず書房Amazon 以前私が書評した「The Kindness of Strangers」が「親切の人類史」という邦題で12月に邦訳出版されるようだ.書は実験心理学者であるマイケル・マカローによるヒトの見知らぬ他人に対する利他性がどのように説明されるのかを扱ったものだ.前半は進化的な視点から包括適応度理論(血縁淘汰),マルチレベル淘汰,直接互恵,(社会淘汰を含む)間接互恵からどこまで説明できるのかを扱い,後半では共感のサークルの拡大が理性の役割とともに歴史的に語られている. 前半部分は非常に簡潔かつ明晰な良いまとめになっている.特に現在筋悪のマルチレベル淘汰論者が偏狭な利他主義仮説をもてはやしていることに対して,そもそもマルチレベル淘汰と包括適応度理論(血縁淘汰)は数理的に等価であり,マルチレベル淘汰で

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    o_secchan 2022/11/15
  • 書評 「What is Tanuki?」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    What is Tanuki? 作者:佐伯 緑東京大学出版会Amazon 書は東大出版会より出されたタヌキの専門書だが,そこからとても予期できないほどの迫力と熱意にあふれただ.著者は,タヌキを追いかける傍ら極真空手にうちこみ,その黒帯を持つ女性研究者であり*1,そもそもこの「What is Tanuki?」という題は極真空手創始者の大山倍達の著書「What is Karate?」ヘのオマージュであるというのだ.いかにも型破りで期待を持たせる. 第1章 タヌキの生き方 第1章ではタヌキとはどういう生物なのかが概説されている.個人的に興味深かったところを紹介しよう.また第1章の最後には著者が「信綱」と名付けたタヌキの生き様が具体的に紹介されている. タヌキは肉目動物の中で「器用貧乏」だ.走りも泳ぎも登りも狩りもある程度はこなせるが特に優れたものはない. 生態的には「好機主義的雑」であり

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    o_secchan 2022/10/10
  • 「人類進化史における戦争の文化」コンシリエンス学会研究会 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    www.cnslnc.academy 9月13日に標記研究会がオンラインで開かれたので参加してきた.発表者は長谷川眞理子.ダワーによる「戦争文化」で展開された議論を題材にそれを進化心理学的に考察してみよう,そしてコンシリエンスを目指す若い研究者たちにはヒトの行動を扱うことの複雑さを理解してほしいという趣旨での講演となった. 人類進化史における戦争文化 長谷川眞理子 私は自然人類学の出身だが.これは自然科学の一分野で,アプローチにはいくつかの方法がある.主流なのは化石から迫るものと遺伝子から迫るものだが,私はどちらにもあまり興味がなかったので,行動と生態からのアプローチをとることにした. 生態から人類を考えるのには生態人類学として狩猟採集社会などを研究する方法もあるが,当時,人間とは何かがあまりわかっていないという自覚があり,そのアプローチはとらなかった. そして共通祖先であるチンパンジ

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    o_secchan 2022/09/23
  • 書評 「Dancing Cockatoos and the Dead Man Test」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    Dancing Cockatoos and the Dead Man Test: How Behavior Evolves and Why It Matters (English Edition) 作者:Zuk, MarleneW. W. Norton & CompanyAmazon 書は性淘汰のパラサイト仮説(ハミルトン=ズック仮説)で有名な行動生態学者マーリーン・ズックによる一般向けの科学書だ.ズックはこれまで一般向けの科学書を4冊書いている.このうち「Riddled with Life(邦題:考える寄生体)」と「Sex on Six Legs」はパラサイトとホストに関する行動生態,昆虫の行動生態についての優れた啓蒙書であり,「Sexual Selections(邦題:性淘汰)」と「Paleofantasy(邦題:私たちは今でも進化しているのか?)」は巷にはびこる進化生物学に関連した

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    o_secchan 2022/09/14
  • 書評 「食虫植物」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    虫植物 進化の迷宮をゆく (岩波科学ライブラリー) 作者:福島 健児岩波書店Amazon 書は虫植物を扱った岩波科学ライブラリーの一冊.虫植物といえばハエトリソウやモウセンゴケやウツボカズラが頭に浮かぶ.彼等は窒素を(根からの吸収ではなく)虫を捕らえて消化吸収することによって得ている.貧栄養土壌に置ける合理的な窒素獲得戦略であり,様々な植物群で見られるものだと思っていたが,考えてみればそれ以上のことはあまり知らない.というわけで手に取った一冊になる. 前書きで早速虫植物についてのいくつかのトリビアが開陳されている.冒頭からなかなか楽しい. リンネはハエトリソウが昆虫をべているという報告をその乾燥標を見たあとでも信じなかった. ダーウィンはハエトリソウを「世界で最も不思議な植物の1つ(one of the most wonderful [plants] in the world

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    o_secchan 2022/08/29
  • 書評 「Speech!」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    SPEECH! How Language Made Us Human (English Edition) 作者:Prentis, SimonhogsaloftAmazon 書は通訳兼翻訳家(何カ国語も扱うが特に日語通訳としてのキャリアが長い)であるサイモン・プレンティスによる言語が使えることによりヒトは何を成し遂げてきたのかを論じるになる.プレンティスは言語学や進化生物学の専門家というわけではないが,ドーキンスやピンカーが推薦文を寄せているというので読んでみたものだ.副題は「How Language Made Us Human」 冒頭には「ウクライナのための序文」がおかれている.これは書脱稿後にロシアウクライナ侵攻が生じたことを受けているもので,(実は書ではその最終章で,言語により世界が平和に向かってきたが,それはなお未完であり,国連の改革が必要であることを論じている)どうして

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    o_secchan 2022/08/19
  • 書評 「進化政治学と平和」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    進化政治学と平和 科学と理性に基づいた繁栄 作者:伊藤 隆太芙蓉書房出版Amazon 書は進化政治学者伊藤隆太による3冊目の進化政治になる.伊藤は1冊目の「進化政治学と国際政治理論」では国政政治理論の古典的リアリズムを進化心理学的知見を基礎に進化リアリズム*1として再構築し,(ネオリアリズムの立場から見ると不合理な)戦争開始決定を部族主義,過信,怒りなどの概念を用いて説明してみせた.2冊目の「進化政治学と戦争」においては進化リアリズムの基礎的知見を人間行動モデル*2として提示し,ヒトには戦争することに使われる人間性が備わっているとする「戦争適応化説(個人レベル,集団レベルの抗争を可能にする心理メカニズムを奇襲と会戦に分けて説明するもの)」を提示した.2冊とも科学哲学的に実在論に立っていることを強調している.そして今回の「進化政治学と平和」においてはやはり実在論を強調しながら新しく進

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    o_secchan 2022/06/11
  • 訳書情報 「ヒトは〈家畜化〉して進化した:私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか 」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    ヒトは〈家畜化〉して進化した―私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか 作者:ブライアン・ヘア,ヴァネッサ・ウッズ白揚社Amazon 以前私が書評したブライアン・ヘアとヴァネッサ・ウッズ夫による「Survival of the Friendliest」が「ヒトは〈家畜化〉して進化した」という邦題で邦訳出版された. 書はヒトの同種個体に対する友好性そして協調性が「自己家畜化」を経由して進化したものであることを説得力を持って解説している好著だ.特にトマセロやランガムの元での経験談や家畜化について知るためにシベリアのベリァーエフのキツネ飼育実験場まで赴いた話などは臨場感たっぷりで楽しい.後半はそのような同種個体への友好性を持つヒトがなぜ戦争やジェノサイドを引き起こすのかについて,外集団に向けた敵意も自己家畜化の一側面であり,それが相手の<非ヒト化>を通じて強化されるという議論を行っている.

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    o_secchan 2022/06/04
  • 書評 「証拠法の心理学的基礎」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    証拠法の心理学的基礎 作者:マイケル・J・サックス,バーバラ・A・スペルマン日評論社Amazon 書は英米法の中の証拠法について,心理学的な視点から考察を行うだ.心理学と法学のコンシリエンス的な内容で面白そうだし,海外ドラマの法廷ものを観るときにより楽しめるのではないか*1と考えて手に取った一冊になる. 著者のサックスとスペルマンはともに法学,心理学の両分野のキャリア*2を持ち,行動科学,心理学と法律の関係性や記憶と推論の法・公共政策などの研究者だ.原書はNYU Pressの法の心理学シリーズ*3の一冊.原題は「The Psychological Foundations of Evidence Law」. 日は古代ローマ法を継受した大陸法系に属する.大陸法系では基的に自由心証主義をとり,日においては法廷で用いられる証拠の証拠能力に関する制限はほとんどない.例外は戦後に英米法の影

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    o_secchan 2022/05/24
  • 書評 「魚にも自分がわかる」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    魚にも自分がわかる ──動物認知研究の最先端 (ちくま新書) 作者:幸田正典筑摩書房Amazon 書は最近毎年のように動物行動学会でホンソメワケベラの認知能力(特に鏡像自己認知能力)について驚きの発表を行っている幸田正典の手になる一冊.まさにそれら一連の研究結果がまとめられた書籍になる. 冒頭の「はじめに」において,10年前に「魚が鏡像自己認知できる」ことを発見したが,それは当時常識を逸脱した内容とされ,なかなか受け入れられなかったこと,そして当時はガリレオの心境だったことが述べられている.しかし著者はこれを乗り越えて,追試を含めて次々に驚きの発見を続けていく.書のその発見と主流への挑戦の物語りになる. 第1章 魚の脳は原始的ではなかった 第1章は物語の前段である,「なぜ『魚などに鏡像自己認知できるはずがない』という『常識』が形成されていたのか」が解説される.それは脊椎動物の脳について

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    o_secchan 2022/03/11