タグ

ブックマーク / www.aozora.gr.jp (1)

  • 夏目漱石 田山花袋君に答う

    月の「趣味」に田山花袋君が小生に関してこんな事を云われた。――「夏目漱石君はズーデルマンの『カッツェンステッヒ』を評して、そのますます序を逐(お)うて迫り来るがごとき点をひどく感服しておられる。氏の近作『三四郎』はこの筆法で往くつもりだとか聞いている。しかし云々」 小生はいまだかつて『三四郎』をズーデルマンの筆法で書くと云った覚えなし。誰かの話し違か、花袋君の聞違だろう。疎忽(そこつ)なものが花袋君の文を読むと、小生がズーデルマンの真似(まね)でもしているようで聞苦しい。『三四郎』は拙作かも知れないが、模擬踏襲(もぎとうしゅう)の作ではない。 花袋君は六年前にカッツェンステッヒを翻訳せられて、翻訳の当時は非常に感服せられたが、今日から見ると、作為の痕迹(こんせき)ばかりで、全篇作者の拵(こしら)えものに過ぎないと貶(へん)せられた。褒貶(ほうへん)は固(もと)より花袋君の自由である。しか

  • 1