生きていて、信念が報われず裏切られることや、欲望にまけて自ら誰かを裏切ることや、回復がついに叶わないような無数の絶望を繰り返し経験することで、既得の経験に視界を奪われてしまうことがある。自己嫌悪と無力感に苛まれ、すべてを棄ててしまい、再び歩き出すために身を起こすこともできず、ただうなだれるしかないと思い込むことがある。そういう状態が終わることなく続いて、自分は本当にもうダメなのだと信じ込んでしまう。 映画監督に限らず、いわゆる人間の身の丈を超えるモノを作ろうとして四苦八苦する人ならば、誰しも襲われるであろうこの経験。あの絶望の時間。大仰な正義や、崇高な達成を想定しないまでも、たとえばただ自分なりの幸福を追求しようとするような、ありきたりな発想でも、そこに挫折があれば、真面目な人ほど、驚くくらい容易に、真っ暗な闇のなかに、あるいは何も見えないようなホワイトアウトのなかに、落ち込んでいく。 自