「読書の初心者にお勧めの本」を聞かれることがある。 読書の習慣がない小中学生や、あまり本を読んでこなかった人に向けて、どんな本が良いだろうか、という相談だ。 このとき、『はてしない物語』や『ハリーポッター』といった本を勧めてくる人が、かなりの確率でいる。 おそらく、自分が読んで夢中になったからかもしれぬ。あるいは、自分が初めて一冊を読み通した本だったり、時を忘れて物語の喜びに浸った本だからかもしれぬ。 しかし、考えてみてほしい。本を読みなれていない人に、ボリュームのある物語を渡して、読み通せるだろうか? わりと大変なような気がする。読書を日常にしている人は、本に慣れていない人のハードルを過小評価しがちだ。 だからわたしは、さらりと読める短編集や、じわりと刺さる詩集を勧めている。ぜんぶ読みぬく必要がなく、どこから始めてもいいし、途中で投げ出してもいい。本の重みやページをめくる感覚を愉しむのも