それにしても―― 「なんて奴だ……」 完全に剣を引き抜いたマクシムのほうを見ながら、ヴァイクは内心、戦慄に震えていた。 こちらが背後をとったと思ったとき、うしろを振り返らずに勘だけで強引に横に薙ぎ払ったのだ。 しかも無茶な攻撃を放ったことで体勢が狂ったはずなのに、間髪を入れずに詰め寄ってきた。 恐るべきその戦闘能力。恐るべきそのセンス。 翼人最強というその称号は、だてではなかった。 だが、衝撃を受けているのは、かならずしもヴァイクだけではなかった。 「それはこっちの台詞だ。まさかすべての攻撃をことごとくかわされるとは思わなかったぞ」 ここまで四撃。 そのいずれもが、普通ならばほぼ確実に相手を仕留めているはずのものだった。しかし反対に、すべてをものの見事にかわされ、かすり傷ひとつ負わせることもできなかった。 これは驚愕すべき事実だったが、マクシムはむしろうれしそうに微笑んでいた。 「ひとりの