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ファンタジーと自作小説に関するoukastudioのブックマーク (4)

  • つばさ 第二部 - 第九章 第二十節

    ほとんど人の気配を感じない石製の通路は、ただひたすらに冷たく、無機的な印象をさらに強め、来るものを確実に拒む。 ダスク共和国の首都にあるディラン宮は、いつにも増して深い静寂に包まれていた。ほとんどの人間が外に出払い、ここには警備上、必要最小限の兵しかいない。 すべては、戦時下ゆえであった。 そんな都のブランで、国の最高権力たる執政官のひとり、アランは、来る者もないというのに謁見の間である〝鷹の間〟でたたずんでいた。 元から気難しげな顔が、今はさらにその深刻の度合いを増している。念のため近衛兵がついてはいるが、誰も声をかけることはできなかった。 とげとげしい空気を発する男の元へ、不意に近づいてくる気配があった。 「どうした、アラン」 呼びかけられて初めて気づいて顔を上げると、そこにはもうひとりの執政官がいた。 「――ミレーユか」 いつもより楽な格好をした彼女は、特徴的なきつめの化粧も今日は薄

    つばさ 第二部 - 第九章 第二十節
  • つばさ 第二部 - 第九章 第十九節

    下も乱戦、上も乱戦。 体勢を整えようにもこの荒れに荒れた状況の中ではどうしようもなく、仲間に対して伝達することさえまともにできない。 空気も何もかも重かった。 ――これが新部族の実力かよ。 舌打ちしたくなる思いに、灰翼のゼークは顔をしかめた。 指揮官たるアーデが失踪し、気持ちに混乱があるとはいえ、ここまで弱さを露呈するとはあまりに情けない。 ――自分も人のことは言えねえか。 今のところ、周囲の敵にみずから対応するので手いっぱいだった。剣を振るっても振るっても敵の連鎖は終わらず、戦いがつづく。味方の状況を正確に知ることさえ厳しかった。 とはいえ、力量の差は歴然。向かってくる無謀な者たちを次々と倒していき、やがて手近な敵はすべて退けた。 ――さぁて、どうする。 と、何かが近づいてくる気配を感じたのは、剣についた血を一度振り払ったときのことだった。 「あいつは……」 目をむいて驚いた。視線の先に

    つばさ 第二部 - 第九章 第十九節
  • つばさ 第二部 - 第九章 第十八節

    『外へは出るな』 そんなアーシェラの言葉が耳に残りつつも、中規模といえる館のロビーでネリーはひとり、右往左往していた。 外から断続的に響いてくる地鳴りのごとき轟音が、己の体だけでなく魂までも揺さぶりつづける。それらの中に混じる無数の悲鳴が、なぜか刃のように鮮明になってこちらを斬りつけてくる。 それから耳を塞ぎたくて、さっきまでは自室のベッドで布団にくるまっていた。だが、何をしようとその凶器ともいえる音は、無情にもこちらの内側へ入り込んでくる。 ――じっとしているということが、こんなに苦痛だったなんて。 何もできない自分。 何も見えない自分。 ――いや、そうじゃない。 |何もしようとしない自分《、、、、、、、、、、、》。 きっとこんな状況でなかったとしても、自分から進んで何かをしようとすることはなかっただろう。昔からそうだ、仕事や母親の看病を理由に新しいことから逃げつづけてきた。 自分ががん

    つばさ 第二部 - 第九章 第十八節
    oukastudio
    oukastudio 2018/04/14
    お待たせしました……
  • つばさ 第二部 - 第九章 第十七節

    方々から立ち上る不穏な土煙はあたかも狼煙のようでもあり、それが見えるだけでいやおうもなくこころが騒ぐ。 ――状況は変わらず、か。 ノイシュタットにとっての戦況は思わしくない。ただの暴徒と思っていた相手はその大半が正規兵で、異様に士気が高いという現実が前線の兵士たちを戸惑わせている。 無理もない。他国との戦ともなればそれなりの〝覚悟〟が必要だというのに、その準備がまるでできなかった。いや、させてやれなかった。 万全を期したつもりが、この体たらく。戦というものの恐ろしさを思い知ると同時に、自分への失望が込み上げてくる。 「己という指揮官はこの程度か――」 「何をおっしゃいます、フェリクス閣下!」 元気のいい声が横から飛んだ。 青鹿毛(あおかげ)の馬上にいるのは、近衛騎士でありながらいつもは最前線にいるゲルトであった。いくら現在ではその位が名誉職化しているとはいえ、ノイシュタット侯軍のなかにおい

    つばさ 第二部 - 第九章 第十七節
    oukastudio
    oukastudio 2018/03/07
    久しぶりの更新。あと少しと思っていたら、よく考えたらエピローグの分が…
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