「道に迷っちゃった……」 少し癖のある黒髪の少女は、広すぎる校内でさまよい歩いていた。 黒のセーラー服というシンプルな制服を身にまとった彼女は、まったく方向感覚が掴めないらしく、同じところで右往左往していた。 人に道を尋ねようにも、今はもう授業中なのか、それとも場所が悪いのか、周囲に人の姿はない。 途方に暮れて立ち止まったとき、ふと不自然な気配を感じた。 否、これは明確な霊気。 ――下へ向かってる? 急速に動くそれは、自分の下方をどんどん移動しているようだった。 ――地下なのかな? 階下へ向かいたいのだが、もう一度周囲を見回しても標識や案内図のような物はなかった。 ――急がないと。 もたもたしている暇はない。ここに〝彼女〟が再び来ていることはわかっているのだ。 急がなければ、また間に合わなくなってしまう。 焦った少女は余計に動き回り、余計に目的の場所から離れていく。方向音痴な人間にありがち
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