いよいよ帝都が近づいてきた。これからいくつかの丘を越え、二つの森を抜けると、そこからはもうリヒテンベルクの威容が見えるはずであった。 ここまで歩いてきたおかげで、ヴァイクの翼の傷もだいぶ癒えた。激しく動かすとまだ痛みはあるものの、普通に飛ぶ分には問題のないほどに回復していた。 問題はベアトリーチェのほうだ。女の足ではさすがにこの道程は厳しかったらしく、疲れがたまってきたのか、進めば進むほど口数が少なくなっていった。 ヴァイクも元より、よくしゃべるほうではない。ジャンもこれといって話すことがなく、一行はただ淡々と歩を進めることになった。 それが不意に止められたのは、丘の谷間を埋めるように広がる森の中へと入ったときのことであった。 「ヴァイク、あれ――」 「うん?」 最初に気がついたのはジャンだ。 言われてヴァイクが前方を見やると、道を塞ぐようにして立つ木の幹に何か違和感があった。 よく見ると