静寂の森を包む暗闇の中、小太りの男は頭を抱えていた。 ――あのときの雰囲気と似ている。 そう、帝都騒乱の直前と。 穏やかで静かでありながら、そのどこかにぴりぴりとした張りつめた空気を感じる。それがわかっていても対応することができず、時間ばかりが過ぎていく。 「ああ、俺はどうしたら……」 「ジャン?」 横合いから、かわいらしい少女の声が聞こえてきた。呼ばれた男がはっとして立ち上がると、すぐ近くに白翼のマリーアが立っていた。 「どうしたの? 茂みの中になんか隠れて」 「あ、ああ。よく考えごとをするときこうするんだ」 それは嘘だった。怖くて自分ではどうしようもないときに、故郷でも同じようにしていたのだった。 こちらをじっと見つめるマリーアに、重ねてどんな言い訳をしたものか悩んでいると、彼女のほうが先に口を開いた。 「ジャン」 「は、はい」 少女には不似合いなほどの妙な迫力に圧倒され、声がうわずっ