イスラエル共和国内にある都市カイサリア。この古代の港湾都市は、19世紀末、つまり20世紀半ばのイスラエル建国以前より、有名なユダヤ系の大富豪一族ロスチャイルド家の「私有都市」となっている。 イスラエルの先駆けとも言えるカイサリアは、イスラエルの未来を占う場所ともなりうる。フランスメディア「ル・モンド」による貴重な現地取材をお届けする──。 ロスチャイルド家の私有都市 2019年5月29日。イスラエルでは国会が解散し、史上初の再選挙が決まるという政治的危機を迎えていた。 その渦中、イスラエル大統領ルーベン・リブリンは、アリアーヌ・ド・ロチルドと合流した。 場所はカイサリア。地中海の波が打ち寄せる古代都市だ。 この訪問は、ヘロデ王時代の遺跡を改修し、新たな観光施設が完成したことを祝うためだった。 風がヤシの木をゆっくりと揺らすなか、古代港の遺跡に臨む盛大な式典が開かれた。多くの賓客を前にして、